介護休業制度は
「家で親の面倒を見るため」の制度ではない

 40代以上のビジネスパーソンにとって老親とはリスクである、このことをしっかりと認識しておくべきです。彼らが働く企業の側も、対策を講じるべき時期に来ていると思います。

 老親問題の入り口は、物忘れや脳梗塞であることが多いです。そうなると近い未来には必ず介護が必要となります。すべての企業には、介護休業制度の導入が義務付けられています。これは、「3カ月間(93日間)までなら通常賃金の67%を給付するから、仕事を休んでもいいですよ」というものですが、現役世代からは芳しい評価は聞こえてきません。

 その理由としては、(1)そもそも親の介護のことで職場を離れたくない、(2)人事評価に影響が出そう、(3)3カ月では問題解決に至らない、(4)仕事を完全に遮断することは無理、(5)家庭に支障が出そう――などが多いです。

 同制度の取得要件は「親が要介護2以上」です。厚労省に問い合わせてみたところ、「要介護2」を在宅介護から施設介護への転換期と位置付けているようで、「3カ月あれば条件に見合う施設を探して入所させることができるでしょう?」ということのようです。

 しかし実際には、介護休業した人の多くは、自ら介護に携わってしまう傾向があります。そもそも介護保険制度は、介護はプロに任せようというコンセプトでスタートしたはずだったのに、職場を離れた社員が家で親の介護を行った結果、仕事や家庭に支障が出てしまう。これは、行政の意図が周知徹底されていないためなのは明らかです、PR不足もいいところではないでしょうか。