「原始人のような子」に育てる

「からだの脳」時代における親の役割は、とにかく「昼行性動物」のリズムを脳に覚えこませることに尽きます。昼行性動物というのは夜行性の反対ですから、「朝太陽が昇ったら活動を開始し、夜太陽が沈んだら眠る」生活をする動物のことです。人間は人間なのですが、まだまだ現代人には程遠い、原始人のイメージです。

 端的に言うと、赤ちゃんが生まれてから親が行う「育児」とは、5歳までに立派な原始人を作り上げることと言っても過言ではない。これが「からだの脳」育てです。5歳までに、動物の本能というか、自分が生き延びるために環境に適応する力を身に付けなければならないのです。

 たとえば、あちらの藪が動いている。カサカサと音がする。敵がいるかもしれないと察知する視覚と聴覚。何か匂いがするぞと感じる嗅覚。何かの実を拾って食べたときに、味がおかしい、食べちゃダメだとなる味覚。風が湿っぽいから雨が降るぞと察知する触覚。これら五感を使って身を守るのです。

 そうやって安全を確認したらリラックスする。そして、きちんと一日3回空腹を感じて食事を自発的に摂る。時々刻々と変わる気温や湿度の環境に適応するよう、自律神経を働かせて体内環境を維持できる。敵が現れれば感情むき出しにして怒り、恐怖し、逃げる、戦う。これが原始人の力です。

 本能といってもいいでしょう。この力を作るために、大人が日々の「生活」から脳に刺激を入れ続けることが、「からだの脳育て」というわけです。

 また、この時期には「からだの脳」に基地を持つ原始的な3つの神経伝達物質「ドーパミン・セロトニン・ノルアドレナリン」の分泌を促進することも重要です。それをすることで生きるための力の土台を作ります。

 この三大神経伝達物質は、生まれてから5歳までにしっかり分泌されることが大事です。脳にしっかりと良い刺激を与えておくと、高度な神経ネットワークが形成され、最終的に「こころの脳」育ての時代になると、ストレスに強く論理的思考や抑制機能が高い脳になるのです。