村上世彰×池上彰「マネー大予言」#1Photo:Diamond

米シリコンバレー銀行破綻に端を発した金融不安は収束したのか。あるいは金融危機の始まりなのか。そして日米の金利差は拡大し続けるのか。投資家・村上世彰氏とジャーナリストの池上彰氏が語る。(ジャーナリスト 池上彰、投資家 村上世彰 構成/梶原麻衣子)

シリコンバレーバンク破綻と
クレディ・スイスの危機をどう見るか

池上 村上さんはシンガポールにお住まいがありますが、この3年ほどは米国ロサンゼルスに拠点を置いていたそうですね。

村上 はい。新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから最初の1年間はシンガポールと日本を無理に行き来していたのですが、米国が最も早く入国制限を緩和して出入国しやすくなったので、ロサンゼルスに拠点を置いていました。

池上 シンガポール滞在中は、これからの発展が期待されるマレーシアやインドネシアへの投資を行うとおっしゃっていました。米国でも投資はしていたのですか。

村上 ほとんど投資はしていません。米国経済がどうなっているかを学びながらの生活は、とてもいい勉強になりましたけれどね。

池上 米国といえば、シリコンバレーバンク(SVB)が3月10日に破綻に追い込まれました。しかも金融不安は伝染するもので、米国のさまざまな中小銀行から預金が流出し、さらには影響が海を越えて、スイス金融大手のクレディ・スイス・グループ(CS)までも経営危機に陥りました。これをどうご覧になっていますか。

中長期で見た場合、
利上げで一番もうかるのは銀行

村上 全然大したことないと思っています。なぜSVBが倒産したか。私なりの解釈で言えば、短期的にはあまりに急激な金利の引き上げを行ったからです。

 例えば10年物の国債を1%の利回りで持っていたとします。これが仮に5%の利回りになったとすれば、4%×10年分、資産価値が下がりますよね。金融機関は運用のために債券をかなりの量、持っているので、SVBの持っている債券の下落率が自己資本を全て失わせるほどだった、ということでしょう。中長期で見た場合、銀行は金利が上がれば一番もうかるのですが、今回は短期的に、急激に上げたからこその問題が出てしまったのでしょう。

池上 SVBの場合は、SNSで「大口預金者がお金を引き出した」という情報が急速に広がって、「自分も早く引き出しておかなければ」と焦った預金者たちが銀行に殺到したことも契機になりました。以前にもうわさ話や口コミで取り付け騒ぎが起きたことはありますが、SNSで一瞬のうちに広まってしまう怖さを今回、目の当たりにしました。SVBはこれで一気に破綻に至り、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に置かれることになりました。

村上 たった数日でわっと取り付け騒ぎが起こり、一気に破綻という話に発展しましたから、さすがに驚きました。ただ、再建に入るということなので落ち着いてくるとは思っています。

次ページでは、SVBの破綻やCSの危機の理由と今後を深読みするとともに、米国の金利と日米金利差、ドル円相場の行方を語り合う。シリコンバレーの企業に投資する村上氏には2月、あるオファーが届いたという。その中身とは?対談はさらに強盗グループ「ルフィ」の話にまで及び、お金に困った若者が犯罪集団の手先になるような環境を変えるべく、自らの起こした“アクション”を明かした。