内定を複数もらっても
腹落ちできない学生たち
これが、さらにある特徴的な現象につながっています。昨年、就活を行った23卒の学生に関して、キャリアカウンセラーの方に話を聞くと、4つも5つも内定を持っているのに、「最終的に企業を決めなくてはいけず、自分らしい選択をしなければと思うが、自分らしい選択の仕方がわからないから教えてほしい」という学生からの相談が増えたというのです。
キャリカウンセラーの方が言うには、内定はもらえても、コロナ禍の制約で主体的に取り組んだと思える経験が少なくなってしまったことと、自分を理解してくれる第三者との対話を通じた自己を深める機会が少なかったために、内定した会社について自分の中で腹落ちし切れず、選べない」とのことです。保護者に「こっちがいいのではないか」と言われてそうかなと思ったり、友達に「それよりこっちじゃないの?」と言われて迷ったりといった具合に、自分の基準で就職の軸を作れていなくて、苦労しているのだそうです。
このような状況の中で、改めて学生の皆さんに知っておいてほしいことがあります。当研究所の調査でも、企業側が「ガクチカ」で学生の皆さんに聞きたいのは、「力を入れたこと」そのものではなく、「どのように工夫して取り組もうと思ったのか」「力を入れたことから何を学び、それを次にどう生かそうとしたのか」といった、経験したことからどう学び、次の経験やステップに生かしているのかといったことに着目している企業の割合が圧倒的に多いのです。
ですから学生の皆さんは、「全国1位になりました」といったような派手できらびやかな経験を語らないといけないと思う必要はありません。自分が取り組みたいと思ったことにどのように主体的に目標設定し、それを達成するためにどのような工夫をしたか、そこで実現したことをどのように次に活かそうとしたかを言語化し、自身の力を発揮しやすい「自分らしいスタイル」について話をすればよいのです。
その中から、企業はその学生が自社のスタイルに合うか、自社の職場のカルチャーにフィットするのかを見極めようとしているわけです。もちろん、頑張った結果としてちゃんと成果がついてきているというエピソードであれば、自信を持ってその成果を語ればよいと思います。