御茶ノ水駅から水道橋駅のJR中央線沿いに関連施設が集まる順天堂大医学部(東京・文京区)。矢継ぎ早に進む大学側の高大連携協定が目指すものは何か

大学入試改革と「高大接続」

 神奈川の私立中高一貫校で進路指導担当を長く務め、新型コロナ禍で十分に活動ができなかったとはいうものの、東京の私立大で高大接続担当客員教授も担った峰康治氏は、高校と大学の双方から「高大接続」の現状を見た希有(けう)な存在だ。

 その峰氏が、「高大接続」を意識した取り組みを始めたのは15年ほど前のことである。当初は、有名私大やこれまで進学実績のなかった中堅大からの学校推薦枠確保が主眼だった。「自校の生徒が伸びる大学を取ってくるのが一番」ということで、横浜の学校に通う女子生徒にはなじみが薄い東京の世田谷区や武蔵野市方面にある大学も開拓、高大連携協定書を結んだあと、大学の教員による出張講座を受け入れ、大学のキャンパスへ引率するなどを進路指導の一環として実施してきた。

 「高大接続」が脚光を浴びるようになったのは、2015年末、中央教育審議会高大接続特別部会が「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」を公表してからである。これを機に、高大接続連携に関する協定を結ぶ例が増えてきた。大学側にすれば、入試改革への取り組みは文科省からの評価に結び付くし、中高一貫校側からすれば、進学実績と共に受験生にアピールできる。

 この間、10年に一度改定される新しい学習指導要領が小中高で順次導入された。大学入試センター試験が終了し、21年度から大学入学共通テストに衣替えしている。合わせて、すべての大学が対象となる「大学入学者選抜実施要項」の見直しも行われている。

 この間は私立大を中心に一般選抜の比重が低下し、AO入試と呼ばれた総合型選抜が大きく伸張、学校推薦型選抜と合わせると、入学定員の半分以上がこうした非一般入試で決まる大学が珍しくなくなるほど、大学入試の実態が変化した。その背景に少子化があることは言うまでもないだろう。

 進学校にとって、大学入試がどのように変わるかは死活問題でもある。文科省高等教育局は、22年9月、「大学入学者選抜における好事例集」の中で、「高校との連携をはじめとする高大接続改革の推進」として国立大の取り組み例を挙げている。

 第1次選考に高校教員によるコンピテンシー(多段階)評価を採用した北海道大「総合型選抜」、金沢大学は高大接続プログラムを受講して評価基準を満たした生徒向け「KUGS特別入試」と大学主催のコンテストで入賞した生徒向け「超然特別入試」を設けた。

 自分が最も注力した取り組みへの振り返りを評価する島根大学「へるん入試」、熊本大学は県内高校生を対象としたグローバルリーダー育成塾「肥後時修館」を立ち上げ、旧官立大で構成される国立六大学連携コンソーシアムが開発した「ペーパーインタビュー」も合わせて実施に移している。

 今回は、私立医科大と女子大・中堅大に関して、「高大接続」の現状を見ていこう。