お笑いのスキルがなぜビジネスでも役に立つのか

 NHKの連続テレビ小説『わろてんか』の漫才指導をしていたときの話です。テレビスタジオで仕事をしているとスタッフらしき男性が「本多先生!」と私のところにやってきました。私が挨拶をすると、男性は笑顔で「実はNSC出身なんです!」と嬉しそうに教えてくれました。NSC卒業後は舞台やテレビ番組の美術スタッフとして働いているとのことで、その場で当時の授業のことなどで非常に盛り上がりました。

 その教え子が「お笑いの世界からは離れてしまいましたが、NSCでの教えが今でも教訓になっています」と教えてくれました。少し話を聞いてみると、就職したときの面接、現場での自己紹介、普段の打ち合わせなど、限られた時間で自分の考えていることを伝えなければならないことが多いらしく、NSCでの教えがそのまま活きているというのです。

 NSCでは、トーク番組や営業先での司会業も想定して、素早く考える力を鍛える授業がありますが、そこで磨いた力が仕事でも使えるとのことでした。実際に彼と話しているときも私が聞いたことに対して、テンポ良く答えてくれたり、しっかり話しながらも仕事のことを意識していたりと、売れっ子芸人と同じような頭の回転の速さを感じました。

 それまでも、お笑い以外の仕事でも使える技術を生徒に伝えたいと考えていましたが、実際に就職した生徒から反応をもらえたのははじめてのことだったので、大変嬉しく、私も自信になりました。
同時に、NSCで教えていることがビジネスシーンでも役立つのだと確信を持つことができました。