減少は緩やかになるという見込みに欠けている重大な問題
人口減少の不安に拍車をかけているのが、国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに調査している「日本の将来推計人口」の公表だ。
それによれば、2070年の日本の人口は、およそ8700万人。2020年時点で1億2615万人なので、あと半世紀で東京都の人口のおよそ3倍にあたる4000万弱の人間が消滅することになる。
ただ、この減少具合は5年前の試算よりも緩やかになっているという。というと、「少子化対策の効果が少しはでてきたのか?」と思うかもしれないが、そうでない。
「前回推計よりも出生率は低下するものの、平均寿命が延伸し、外国人の入国超過増により人口減少の進行はわずかに緩和」(日本の将来推計人口プレスリリース)。要するに、高齢者が長生きをして、外国人が予想以上に増えていくだろうというワケだ。
この手の推計で出てくる日本の人口は「外国人を含む日本に常住する総人口」が対象だ。そして、外国人は技能実習生制度などの受け入れが拡大したことにより、2066年には外国人が日本の総人口の1割に達するという。
しかし、この予測には大きな「穴」がある。
現在、外国人をまるで奴隷のように扱う技能実習生制度は廃止すべきという議論が進んでいる。しかも、他国と比べて賃金が異常に低い日本に「出稼ぎ」に行きたいという外国人が減っているのに、賃金が上向く兆しすらない。つまり、これからの日本は現在の予測よりも減少具合は深刻になっていく恐れもあるのだ。
このように人口が急速に減っていくという現実を突きつけられると、「いよいよ本格的に少子化対策に取り組まなくてはいけなくなった」と危機感を抱く人も多いだろう。
ただ、悲観的なことを言うようで恐縮だが、もはや日本では効果的な施策を打つことはできないだろう。
これから時々で、あれをすべき、これをやらなくては、という話は次から次へと出てくるが、「誰が責任を取るのか」「弱者切り捨てだ」なんて反対意見が出て、何も決まらない。そういうこうしているうちに、のっぴきならない状況に追い込まれてしまう。
そして最終的に政府は追いつめられる形で、国民が自分の意志で好きな場所に住んで生活をする自由、つまりは「居住の自由」が制限される、と個人的には考えている。
なぜそう思うのか。