本当に好きなことが分かった瞬間
志望業種が見えた

――大学4年次の就活はいかがでしたか。

佐伯 自己分析に苦戦しつつ、並行してインターンに応募しました。経済学部で中小企業経営のゼミに所属し、町工場を訪ねたこと、子どもの頃から料理が好きだったこと――。私は、なぜ料理が、とりわけお菓子作りが好きなのかを改めて考えてみたのです。

 そこで出した答えが、「ゼロからオリジナルを作ること」。とりわけ、「五感で触れられるもの」を作ることが好きなんだ、ということでした。
 
 加えて、子どもの頃に親の仕事の関係でパリに住んでいたことや、都内の外資系ホテルでアルバイトをし、多くの外国人客の接客をした経験などから、「メーカー」「海外マーケット」というキーワードにたどり着いたんです。11~12月のインターンでは、海外に市場展開しているメーカーに志望業種を絞りました

――インターンを経験して感じたことを教えてください。

佐伯 志望する業種は自己分析で決まったのですが、それが本当に自分に合っているのか、インターンはそれを確認する格好の機会です。今の勤務先のインターンは2週間。社内の雰囲気も分かると同時に、選考されている緊張感もあります。複数社のインターンを経験して、「温かい人が多いな」と感じたのが今の勤務先です。

――入社されてからのお仕事はいかがですか。

佐伯 入社後も、あのとき感じた人の温かさは同じです。たとえインターンの時と職場は違っていても。実は、入社後初めての配属先が大阪で、今も大阪で半導体調達の仕事をしています。生まれて初めての大阪――しかも、入社直後からコロナ禍で入社式もなく、研修もリモート、配属後も在宅勤務。同じ寮の同期や先輩とも交流する機会もない、究極の行動制限下でのスタートでした。

――知らない土地で、しかもそこまで孤独な環境にどうやって耐え抜いたのですか。

佐伯 「お菓子作り」という武器を持っていたおかげで耐えられたのだと思います。中学・高校の部活で何回も作った思い出のあるパウンドケーキをよりおいしくアレンジしたり、仕事が終わってから深夜までクッキーを焼いてオリジナルのクッキー缶を作ったり、有名パティシエの動画や本を参考にタルトやパイに挑戦したり……。アイデアが次々に浮かんで止まりませんでした。仕事終わりや休日は、ひたすらお菓子作りに専念していました。

 今でも、お菓子作りは仕事で落ち込んだときの最良の薬です。最近はフランス料理専門の先生のところにも通い始めました。でも、あくまで料理は趣味。私には、この3年間で直面した業務課題を解決するという重要な仕事があります。

――具体的にどんなことに取り組まれているのですか。

佐伯 現在、多くの製造業が事業継続を左右する半導体調達に苦戦している状況なので、サプライチェーンをもっと強くしたいと思っています。それは一企業だけで解決できるものではないので、もっとマクロな、グローバルな視点で取り組みたい。30代までに半導体の安定的サプライチェーン構築のために必要なスキルを高めることが今の目標です。

 若い社員に権限を与え、大きな仕事を任せる会社ですので、主体的に動いて周囲を巻き込み、働きかけるほどやりたいことができるのは確かです。ただ――社内の「カイゼン」運動で、平均年齢51歳、160人の職場のリーダーを仰せつかったのは、本業より少しつらいかもしれません(笑)。