困難を乗り越える体験が自己肯定感を高める

 自己効力感を獲得するには、困難な課題に取り組み、何とかクリアする経験を積むことが必要なのだが、最近は学校も職場も厳しいことを要求しにくい空気があるため、“逆境に陥り、それを何とか頑張って乗り越える”といった経験が乏しいということがある。ゆえに、自己効力感が得られない。

榎本博明『自己肯定感という呪縛』青春出版社榎本博明『自己肯定感という呪縛』青春出版社

 きつい状況に追い込まれたが、諦めずに頑張ることによって、何とか逆境を乗り越えることができた――そうした経験を積み重ねることで、「自分はやればできるんだ」「頑張れるんだ」という自己効力感が手に入るのである。

 その意味では、周囲から厳しい課題が与えられないようなら、自分で課題を設定し、それに向かって頑張るような仕組みを工夫する必要がある。そうでないと自己効力感は体得できず、いつまでたっても自己肯定感が高まらない。

 ただし、いくら頑張っても結果につながらないという場合もある。そんなときも自己効力感を失わないようにするには、結果よりもプロセスに目を向けることが大切だ。一所懸命に頑張ったことのすがすがしさや充実感に目を向けるのだ。

 それによって「やればできる自分」「頑張ることができる自分」を感じることができ、自己効力感が培われていく。このように「やればできる自分」「頑張ることができる自分」を感じる経験を積み重ねることで、自然に自己肯定感は高まっていく。

 自己肯定感が低いことが気になる人は、自己肯定感が高まるという、まやかしのような特効薬を求めたりせずに、地道に「やればできる自分」「頑張ることができる自分」をつくっていくのがよいだろう。