尹政権の対日外交への
批判に終始する民主党

 一方、民主党は、岸田首相との首脳会談について、尹錫悦大統領を「希代の屈辱外交」と批判した。民主党の姜仙祐(カン・ソンウ)報道官は会見で「なぜ両国外交復元の前提が韓国の歴史の放棄でなければならないのか。普遍的人権問題である韓国の歴史を徹底的に無視し屈辱外交を継続するという大統領の立場が会談結果に忠実に反映された」と批判した。

 岸田首相が元徴用工の問題に関し「心が痛む」と発言したことに対しても、「個人の考えとして意味を縮小するのにきゅうきゅうとした」と述べた。

 福島第一原発の処理水放出に関しては「『安全性が確保されなければ放出に反対する』という明確な原則を貫徹できなかった。現地視察団派遣の合意はむしろ汚染水放出用の名分になることが懸念される」と批判した。

 また、革新系メディアのハンギョレ新聞は、「強制動員について謝罪せず、『3.16会談』の繰り返し」と、前回の首脳会談から進展がないとして批判した。

北朝鮮核抑止への協力や
経済安保において前進

 両首脳は会談後の記者会見で、北朝鮮のミサイル情報をリアルタイムで共有するための協議を歓迎し、日米韓で議論を進めることにした。また、尹錫悦大統領は米韓の核協議体に「日本の参加を排除しない」と述べたと言われ、北朝鮮の核抑止強化に向けたワシントン宣言への日本の参加可能性を示唆した。両首脳は広島で開かれるG7サミットで日米韓首脳会議を開き、議論をさらに深めることとした。

 岸田首相は共同記者会見で、「核協議体の創設を含め、米韓の間で拡大抑止の強化に関する議論、日米韓での拡大抑止協議や、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を含めたハイレベルの協議を通じ、拡大抑止強化に向けた取り組みが相まって地域の平和と安定に資する。引き続き日米、日韓、日米韓で緊密に協議したい」と述べた。

 両首脳は、韓国の半導体メーカーと日本の素材・部品・装置メーカーによる半導体サプライチェーン(供給網)構築への連携強化も確認した。日韓両国政府は岸田首相の訪韓に先立ち、半導体関連の輸出手続きが簡素化される「ホワイト国」への復帰を発表していた。

 なお、共同会見の場で記者から、自衛隊機へのレーダー照射問題について質問があり、岸田首相は「双方の関心事項や懸案についてお互いの立場に基づき、議論した」と答えたが、詳細は外交上のやり取りだとして答えを差し控えた。