自己矮小化や皮肉で使う「w」
さらに皮肉度が強い「草」

 一方、特定の相手だけではなく、多くのフォロワーなどに向けて発言することも多いTwitterでは、若干使われ方が異なるという。

「LINEと同じような意図の使われ方に加え、<私は英語にはうるさいです(笑)>というように自慢気に聞こえる主張を緩和させる働きもTwitterでは見て取れます。また、ある政治家のツイートでは<移動が激しい私たちが会議などをするときにお世話になるのが、カラオケボックスです。今日は新しいチラシの最終手直しちう(原文ママ)。音漏れが防げるばかりか、フード・ドリンクも充実(笑)>と使われていますが、これは本題から外れるおかしさを演出して、親しみやすくする働きがありますね」

 ここまでは「(笑)」や「笑」といった、いわば「笑系」がメインだったが、「w」や「草」は若干使われるニュアンスが異なる。

「笑系は基本的に『おかしみ』『主張の緩和』『仲間意識』を伝え、どちらかといえば肯定的な意味合いで、相手との距離感を縮めるものとして使われます。一方、『w』は笑系よりもクールな感じで、自己矮小化や皮肉で使われる場合が目立ちます。『草』はさらに皮肉な意味合いが強まり、語られている内容をよく知るものだけが知り得る笑いや自虐的な笑いで使われる印象があります」

「w」であれば、<かわいそうな人達www(=皮肉)><私の頭痛なんてどうでもいいかwww(=自虐)>、「草」であれば<めちゃくちゃな主張で草(=冷笑)>などの例が挙げられるという。

「もちろん、すべての意図が明確に分けられるものではなく、これまでの分析も数ある中の一例にすぎないかもしれません。各人の嗜好(しこう)による語句の選好傾向も異なりますからね。また、どんな意味を込めたいのか発信者自身にも必ずしも明確に意識化できておらず、曖昧なまま打ち込まれていることもあるでしょう。ここには、気まずい場面などで見られる『外国人が理解できない日本人の曖昧な笑顔』に通じる日本人らしさがあるのかもしれません」

 現在では、仕事のコミュニケーションツール上でも「(笑)」を目にすることもしばしば。「(笑)」のベターな使い方はあるのだろうか。

「気心が知れている仲間内や他人の目を気にしなくてもいい場面なら、好きに使ってもまったく問題ないと思います。ただ、『(笑)』は発信側の意図が曖昧なことが多いだけでなく、受け手側の印象も人それぞれです。相手に解釈を任せますから『そんなつもりの(笑)じゃないのに……』というケースに遭遇することもあると思います。肯定的にも否定的にも捉えられる言葉で、そこが面白さでもありますが、そういった解釈の幅がもたらすリスクもわかっていたほうがいいでしょう。特に世代によっては、受け取り方も受容度も異なるので、上司とのやりとりのような場合は、誤解やいさかいを防ぐためにも打つ前に少し考えたほうがいいかもしれません」

 自分がどのようなときに「(笑)」を使っているのか、改めて考えてみてもいいかもしれない。