業務改善担当の視点とは

 このような業務ミスの問題に対処する際に必要となるのが、「業務改善担当」の視点です。ミスは起こるべくして起こります。業務ミスやスケジュール遅れが起きてしまった場合に、問題(ミス)が起きた原因を正しく分析するために、この視点が必要となります。

「業務改善担当」の視点の全体像を示したのが、図表8です。この図の上から下へと分析を進め、原因を追究していきます。表層的な対策に終わらず、真の原因を深掘りするための方法論です。

 まずは問題定義をした後、問題を分解し、「悪い場所」─つまり、問題が起きた場所─を特定します。そして、その問題が起きた原因を分析していきます。詳しくは後ほど説明しますが、原因分析では最初に「行動」に着目します。その次は「スキル・知識・マインド・ルール」を見ていき、最後が「体調・人間関係・環境・制度」です。

原因を深掘りする
「なぜなぜ分析」

 業務改善担当の視点で原因を探る際に必要となる武器が「なぜなぜ分析」です。

 なぜなぜ分析とは、その名の通り、「なぜなぜ」と繰り返しながら原因を深掘りすることです。なぜなぜ分析については、関連書籍が多く出ていますし、ネット検索でも情報を手に入れることができます。日本の製造業では非常に浸透している考え方で、何かミスが起きた際にはなぜなぜ分析を徹底するように教育している企業も数多く存在します。しかし、正しく使いこなせていないケースも多いです。

 多くの企業で起きている現象を、私は「とりあえずなぜなぜ5回症候群」と呼んでいます。

 ミスが起きた際に、「とにかくなぜなぜを5回すれば大丈夫だ」と間違った理解をしてしまい、問題解決につなげることができない状況のことです。書籍などでは、「なぜを5回繰り返せば、真の原因に辿りつける」と書いてあるため、そうなってしまうのです。

 しかし、何でもよいからなぜなぜを5回やれば大丈夫という話ではありません。「とりあえずなぜなぜ5回症候群」になってしまうと、“思いつきのなぜ”を5回出せばよいと思ってしまいがちです。

 また、実際にやってみると気づくのですが、なぜを5回繰り返すのは結構大変です。なぜなぜ5回にこだわると、4回目のなぜや5回目のなぜが、かなり強引になってきます。