もちろん、5回のなぜを行う必要があるときもありますし、6回以上行うときもあります。しかし、本来なら3回目で終わってもよいときも、4回目、5回目のなぜを無理やり出そうとしてしまいます。5回必ずやらなければいけないと信じ込み、5回することが目的化してしまうのです。そうなると、例えば、景気が悪いからだとか、日本が平和だからだ、といった有効な手を打つことができない原因まで出てきてしまいます。

 つまり、無理やりのなぜは意味がないのです。

 さらに、上司が「とりあえずなぜなぜ5回症候群」に陥っていると最悪です。部下やチームメンバーに対して、なぜなぜ5回をやるように指令を出します。上司から、「なぜだ! なぜだ!」と強く言われると、非常に息苦しいものです。

 しかも残念ながら、その圧力に耐えてなぜなぜ分析を行ったとしても、「なぜを5回すれば大丈夫」としか知らない上司には、なぜなぜ分析の内容面の評価をすることができません。なぜなぜ分析を正しく実行するには、分析するメンバーが正しいスキルを持っていることも大切ですが、それをチェック・評価する上司がそれ以上に深い理解を持っていなければならないのです。

 なぜなぜ分析は非常に強力な武器である一方で、正しい使い方を知らない人が多いということです。そこで、ここからは、実際になぜなぜ分析の方法を紹介していきます。

ケーススタディ 実践編
顧客からの苦情の増加にどう対処するか?

ステップ1 問題分解

 メガネフィットでは、お客様への修理・点検完了の案内漏れのミスの件数が増加し、お客様のお叱りの声が増えてしまいました。まずは何から取り掛かるべきでしょうか?

 問題解決は、「問題分解」から始まります。

 なぜなぜ分析に進む前にやるべきは、「どこどこ分析」です。問題が起きている場所を特定することができれば、「その問題がなぜ起きたか」を考えることができます。

 まずは、「全社で月20件発生する修理・点検完了の案内漏れ」という問題をどんな切り口で分解ができるかを書き出してみました(図表13)。