なぜ中国人の日本に関する興味が高まったのか

 背景にあるのは、まずSNSの力だ。中国のSNSが発達し始めたのはスマホが普及した2013~2014年頃からだが、大手メディアのニュースがアプリでほぼ無料で読めるようになったのも2014年頃からで、中国人にとって「情報」の意味が変わった。政府から与えられる「政治宣伝」(プロパガンダ)だけではなく、自らの意思で情報を“選択”して、入手するものになった。

 政府が発信する情報をうのみにしていた人もいたが、友人や知人が発信する「生の日本」はそれとは異なるもので、次第に興味を抱く人が増えた。「微博」だけでなく、個人が気軽に発信できる「微信(ウィーチャット)」「斗音(ドウイン=動画アプリ)」「小紅書(中国版インスタ)」など「自媒体」(個人メディア)の影響力が強くなったことも大きい。

 自媒体に流れてくる情報は、もちろん、国内ニュースや各自の身近な話題が中心なのだが、2014年以降に起きた海外旅行ブームの影響で、海外の話題も増えた。中でも、日本は中国人にとって最も近い外国であり、日本旅行の経験談や日本で「爆買い」したことをSNSに投稿する人が増加した。コロナ禍前の2019年、訪日中国人観光客は約959万人と過去最高となり、「日本」に関する経験を積んだ人が増えた。

 そうした「日本力」ともいえる基礎知識を持つ人が、ここ数年で急激に増加したこと、在日中国人からの情報発信が増えたこと、すそ野の広がりなどが、日本への相対的な関心を高めたのではないか、と筆者は感じている。