2類相当から5類感染症への変更で
みなし入院への給付金支払いが終了
その後も感染の拡大は続いていたものの、2022年秋になると、パンデミック当初に比べると、重症化する人や死亡する人の割合が低下するようになる。
早期の正常化を求める経済界の声もあり、年明けの2023年1月、国はCOVID-19の感染症法の位置付けを、ゴールデンウイーク明けの5月8日から、季節性インフルエンザや肺炎球菌などと同じ「5類感染症」に引き下げることを決定。
「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」が改定され、陽性者に対する入院の勧告・措置、行動制限などは行われなくなり、感染対策は個人の判断に委ねられることになった。コロナ療養のための宿泊施設も原則的に運用を終え、医療費の自己負担分に対して助成されていた公費負担も見直された。
こうした国の決定に足並みをそろえて、これまで特例的に行われていた民間保険のみなし入院に対する入院給付金の支払いも完全に終了する。「入院」の定義が、本来の保険約款の規定に戻されることになったのだ。
この図のように、COVID-19の陽性診断日が5月7日以前は、65歳以上の高齢者や妊婦、入院を要する人、重症化リスクのある人は、みなし入院でも入院給付金が支払われていた。だが、COVID-19の陽性診断日が5月8日以降は、全ての人がみなし入院では入院給付金を支払ってもらえなくなった。つまり、5月8日以降は、医療機関に入院した人だけが入院給付金の支払い対象になるということだ。
その一方で、公費負担については激変緩和措置が取られている。
季節性インフルエンザや麻しんなど、5類感染症に分類されているものは、通常は医療費の自己負担分への公費負担はない。COVID-19の医療費も、5月8日以降は、原則的には年齢や所得に応じた自己負担が発生することになっている。
ただし、急激な負担増を避けるために、2023年9月末までは、COVID-19の治療に使われた高額な医薬品については、公費負担が継続されることになっている。また、中等症になったり、重症化したりして、入院した場合は、公的医療保険(健康保険)の高額療養費の自己負担限度額から、2万円を差し引く措置が取られる。
10月以降は公費負担が終了する予定だが、健康保険の高額療養費があるため、自己負担は一定範囲に抑えられる。70歳未満の年収500万円の人なら、医療費が100万円かかっても、自己負担するのは9万円程度だ。COVID-19になっても、際限なく医療費がかかるという心配はない。
COVID-19の感染が拡大するなか、自宅や宿泊施設での療養に備えて、新たに民間保険に加入した人もいるだろう。だが、みなし入院に対する民間保険の入院給付金の支払いは、国の要請によって特例的に行われたものだ。感染症法上の位置付けの変更によって、コロナ禍で行われていた民間企業の特例措置も完全に終了した。
混乱のなか、万一の自宅療養に備えて加入した民間保険は、その役目を終えたといえるだろう。今後、本当に必要な民間保険とはどんなものなのか。社会が正常化に向けて動きだした今、考え直してみてはいかがだろうか。