中国メディアで激しさを増す
尹錫悦政権への批判報道
環球時報など中国の官営メディアは連日、尹錫悦大統領や韓国政府に対し、激しい誹謗(ひぼう)中傷記事を掲載している。
共産党機関紙傘下の環球時報は4月30日付の記事で、米韓首脳会談共同声明や核拡大抑止を盛り込んだ「ワシントン宣言」に反発、韓国政府に対し「圧倒的な親米政策を展開している」と非難した。
北朝鮮核への拡大抑止を決めたことについて「朝鮮半島に米国の核兵器を配備するのは中国・ロシア・北朝鮮にとって極めて危険で挑発的な行為」だと主張した(筆者注:米韓側は韓国に核兵器を配備するとは述べていない)。
また、中国の軍事専門家が、朝鮮半島に米国の核兵器を配備するのは「韓国を守るためでなく、北朝鮮の軍事力を口実として、中国・ロシア・北朝鮮に圧力を加えるために米国の戦略資産を配備しようとしている」と述べたことも紹介した。
その上で、「韓国が中ロ朝の警告を無視すれば報復に直面するであろう」とし、それは尹錫悦大統領にとって「悪夢になる可能性があり、韓国が経済と安保の面で被ることになる損失は、米国が提供する保護と投資よりも大きい」と論じた。
環球時報はこのほか4月23日、尹錫悦大統領が訪米前に行った台湾に関する発言について「韓国外交の国格がばらばらになった」と題する共同社説で尹錫悦政権を強く非難した。
また、4月28日付社説では、「歴代の韓国政府の中で尹錫悦政権は米国に対する民族的独立意識が最も欠如している」と指摘した。
韓国政府の抗議に対し
中国側も激しく反論
これに対し韓国政府は、中国メディアに送った書簡で強い遺憾の意を表し「特に口にすることもはばかられるような水準の不適切な表現まで動員して韓国首脳を根拠なく非難する一部の内容は、報道機関による報道なのかすら疑わせるもので、このような報道が韓中関係に及ぼす否定的影響に関するすべての責任は貴新聞社にある」という立場を伝達した。
これに対し中国側のメディアは社説で、韓国政府の抗議があったことを伝え、「他国メディアの独立的報道に対し、乱暴というほどのやり方で干渉するのは容認できない」と主張した。さらに「韓国政府が日米などの地域安定破壊に迎合して、台湾問題など中国の主権がかかった重大問題で何度も誤った発言をして中国内政に干渉したことに続き、中国メディアにまで火力の狙いを定めている」と批判した。
こうしたやり取りについて問われ、中国外交部の汪報道官は、環球時報の社説や記事は「中国政府の立場を反映していないが、中国国内の民意は反映している」との考えを示した。そのうえで、汪報道官は「最近の中韓間の否定的な世論は最初から火がついてはならないものだが、その根源がどこにあるかは全て明確に知っている」と述べ、韓国側を非難した。