忖度ニュースばかりの日本、外から見れば「軍事大国」

 それは、マスコミの営利企業なので、自社の利益のためだ。

 まず、首相と関係が親密になると、総理担当記者が優遇されて取材がしやすい。場合によっては側近から「特ダネ」のリークもいただけるのでさらに旨味がある。さらに、テレビ局の場合もっとズブ…ではなく信頼関係を構築すれば、どこかの民放テレビ局みたいに、バラエティ番組にも首相が出演してくれたりもする。軽減税率や放送法などの業界への規制もお目こぼしもいただけるかもしれない。つまり、日本のマスコミにとって、首相や官邸は「監視・批判の対象」ではなく、「情報を恵んでいただく大口の取引先」なのだ。

 だが、海外メディアにはそもそもこういう発想がない。

「記者クラブで官僚とズブズブになってスクープゲットだぜ!」みたいなワーキングスタイルでもない。だから、インタビューをしてその場がいいムードに盛り上がって、「いやあ、今度食事でもしましょう」なんて首相から社交辞令的なことを言われても、忖度ゼロで厳しい批判記事が出る。

 もっと言えば、「TIME」の記事は批判でも偏向でもない。「平和ボケ」の日本人が知らないだけで、世界から見れば、日本は立派な「軍事大国」だからだ。

 防衛予算は増額されて世界第3位。しかも、岸田首相は安倍長期政権でもなし得なかった、「敵基地攻撃能力の保有」や、アメリカ製の長距離巡航ミサイル・トマホーク400発の導入などを次々と実現させた。「核を持っていないから平和主義だ」とか「我らは専守防衛だ」なんてロジックにこだわっているのは日本人だけで、世界から軍事力を冷静に分析すれば、紛れもなく日本は「軍事大国化」しているのだ。

 もちろん、だからと言って、それが悪いという見方だけではない。例えば、米ウォール・ストリート・ジャーナルでも昨年12月19日に、『「眠れる巨人」日本が目覚める 防衛戦略・支出で戦後最も重要な政策転換を発表』という社説を掲載している。これはTIME誌のように平和主義からの方向転換という話ではなく、中国の脅威に対して安全保障に力を入れるようになって喜ばしいという話だ。

「評価」は違えど、TIME誌も同じ認識だ。実は今回の記事でも、岸田首相が戦後最大規模となる軍備増強を発表し、防衛予算で世界第3位となることを指摘し、「防衛力の強化が核兵器のない世界を目指して努力するという岸田首相の公約と矛盾する」と批判的な見方があることにも触れている。

 つまり、外務省は「見出しと記事の中身が違う」とクレームを入れたが、実は見出しと記事の中身はちゃんと合っているのだ。