派手で目立つ極論は支持を得やすいけれど……
たしかに、ものごとを白か黒かのどちらかに切り分けるような極論は、とても明快であるため、斬新さもあわせもっている場合は、多くの人たちの支持を得ます。そのような意見を述べる発言者も、確固たる意見をもったユニークな存在として多くの人の目に映ることがあります。
若いうちは特に、オール・オア・ナッシングの白か黒かの主張に惹かれがちですが、現実の事柄の多くは、白か黒かの2つに切り分けられるようなものではなく、無理に2つに切り分けると、さまざまな支障が生じてしまうというのが実態です。
たとえば、ある制度の問題点を検討していたときに、「それならば全面廃止しよう」という極論が多くの支持を集めて決定されたとします。しかしそれを実行してしばらくたってみると今度は思ってもみなかった新たな問題が噴出するということはよくあることです。
これは、制度の廃止を決定する前に、廃止に反対する人たちの立場や、廃止したときのメリットだけでなく、デメリットには何があるかといった別の視点でこの問題を検証し、そのような部分に配慮していないから起こることでもあります。
別の視点も組み込んで制度案を練っていれば、「全面廃止」という極論は導かれないでしょう。「条件によって制限する」、「部分的に廃止する」といった案に落ち着くはずです。
極論とは一面的なもののとらえ方が背景にあるので、あとになって想定外の問題を生じさせてしまうのです。その結果、「結局は思慮の浅い案だったなぁ」と評価を落としてしまうことが多いのです。
また、極論は他者への配慮が欠如しているため、まわりから反感を買うことも多く、あとになって批判されるようなことも起こってきます。いわゆる「ブーメラン」として、自分への批判として返ってくることもよくあることです。
「炎上」が仕事になっている人なら、それでもいいのかもしれませんが、一般的な人であるなら極論よりもバランス感覚をもった意見のほうが求められるはずです。
斬新さや過激さを求めて、極論に走りたがる人もいるかもしれませんが、極論は往々にして一面的な見方であり、ものごとの本質をとらえたものではありません。