30年続いたデフレが終わり
投資家になるべき時代に

 次に二つ目の理由である「国策に従え」についてです。商売をするに際し、国の動向は非常に重要です。2011年以降のグリーン投資減税に伴う太陽光ブームや最近のSDGsの流れ、脱炭素などまさに国の意向により「伸びる産業」がわかります。有能な経営者であればあるほど、国策に従うわけです。もっと言うと国策に従うどころか、国策を作ってしまう「政商」と言われる経営者もいるでしょう。

 その点で東京証券取引所は国の機関ではありませんが、証券取引所の雄である東証が「PBR1倍要請」というアナウンスメントを行なったことは、非常に大きな影響力があると思います。国策による株価上昇という点では、2012年からのアベノミクスや2020年のコロナによる日銀の大規模金融緩和によって何が起きたかを振り返れば自明だと思います。

 そして、先日発表された4月の消費者物価指数も上昇しており、幅広い品目で物価上昇圧力が強まっています。30年続いたデフレが終わり、日本もインフレの波が押し寄せていますが、インフレ時代は「消費者の立場のままでは損」をする時代です。投資家にならなければいけない時代なのです。

 たとえば製造業において、インフレは次のような影響をもたらします。

(1)インフレ下で製造業にとっては原材料価格が上昇するので店頭価格を上げます。
(2)上昇した店頭価格で我々は商品を買います。
(3)その製造業は店頭価格を上げたので利益が増えます(上場企業に減益は原則許されません)。
(4)すると増えた利益は株主に配当という形で還元されます。

 つまり消費者という立場は(2)になりますので価格転嫁の被害を受けるだけ。しかし投資家という立場になれば(4)となりますので、インフレの恩恵を受けるわけです(もちろん株価の変動リスクなどはありますが)。