視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。今回取り上げるのは、ChatGPTブームに際し、AIと人間との付き合い方を考えるための一冊です。
ChatGPTの盛り上がりがすさまじい。米OpenAI社が開発・運営する最新型のAI(人工知能)だが、ユーザー数が急増する半面、個人情報漏洩(ろうえい)やフェイクニュース蔓延などの危険性から、規制を検討する動きも出てきている。
筆者も試しに無料版に登録して使っている。確かに滑らかな文章で、わかりやすく質問に回答してくれる。だが、時々明らかな誤情報を自信満々に答えるところが気になっている。
おそらく、月額課金で利用できる「ChatGPT Plus」ならば、より正確な回答を返してくるのだろう。無料のChatGPTが「GPT-3.5」という言語モデルを基盤にしているのに対し、有料の「Plus」はより進化した最新型の「GPT-4」を採用しているからだ。
今年5月10日付の「読売新聞」は『最新版AI「GPT-4」、日本の医師国家試験で「合格」…安楽死などでは不適切解答』と報じている。日米の国際研究チームが、GPT-3.5とGPT-4にそれぞれ直近5年の医師国家試験を解かせたところ、GPT-3.5はすべて不合格だったが、GPT-4は逆にすべて合格レベルに達したという。
一方でGPT-4は、患者への対応に関する設問で、安楽死を促すような言葉がけを「適切」とするなどの誤答をしたそうだ。研究チームは、さらに多くの日本語を学習することで改善するだろうとしている。
今後、さらなる進化を遂げたChatGPTの新バージョンが登場すれば、より正確で深いレベルの情報をアウトプットするようになるのは必至だ。ライターとエディターを生業とする筆者も、うかうかしてはいられない。最新型のAIと人間がどのように向き合うべきか、考えておく必要がありそうだ(ChatGPTに尋ねるのではなく、自分の頭で)。
そのための大いなるヒントを提供してくれるのが、今回取り上げる『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』だ。