静岡県の記者会見(5月15日)では、読売新聞の記者から「これは価値観の違いかもしれないが、高速長尺先進ボーリングの直径12センチが破砕帯に当たったことで大量の水が出てくるとは考えにくいのではないか」と疑問を呈されたほどだ。静岡県は直径12cmのトンネルを掘るのも許さない姿勢なのだ。
さらに、静岡県内の他の箇所でのトンネル湧水を大井川に戻すことで、この期間においても中下流域の大井川の「水の量は減らない」とされている。それにもかかわらず、川勝知事はJR東海に対して「約束違反」と主張してリニアの工事を認める様子はゼロだ。
水問題の次は「生態系」を議題に
すべての開発を止める気なのか…
先ほど述べたように、この「水」の問題において大事なことは、大井川に影響が出ないようにするというその一点だ。工事で出た水は「一滴残らず」「全量戻し」などそもそもする必要のないものだ。減った分をどこからか持ってきて戻せば誰のデメリットにもならない。
大井川の水量が減ること、それによって困る人が出てくることが問題である。それらはすべて解決しつつあるのに、手法に問題があるとして工事をすべて止める行為は、まさしく「妨害」と呼ぶにふさわしい。山梨県の長崎知事は5月16日の記者会見で、「違和感は最後まで拭い切れない」と重ねて、静岡県の川勝知事へ苦言を呈した上で、静岡県に科学的根拠に基づいて対応するよう求めた。
川勝知事は、このように水の問題で時間稼ぎをしつつ、新たなる切り口で妨害工作をもくろんでいる。「生態系」である。もし、リニア工事で既存の「生態系」に一切影響を与えてはいけないという議論になれば、日本全国の公共工事や開発がすべて止まってしまう事態となる。
工事による生態系への影響となると、大井川の流量予測とは比べ物にならないほど複雑性が増す。どこまで調査しても流量予測よりも確からしいことは絶対に分からないだろう。工事をする以上、何らかの影響を与えることは必須だ。
静岡県はすでに新幹線が通っているが、その際、自然環境を一切破壊しなかったのだろうか。東名高速道路はどうだろう。