どの角度から検証しても「シナジー」はまったく見えない。薬局事業が中核のクオールホールディングスが第一三共から第一三共エスファを250億円で買収する話である。
第一三共は新薬特化を名目とするが、どう見てもクオールが参入する後発品産業は斜陽産業。毎年薬価引き下げに原材料高も加わり、専業大手でさえ青息吐息の状態だ。第一三共エスファを支えるオーソライズド・ジェネリックも結局、「後発品」に変わりはない。第一三共からすると、先が見えない事業からようやく撤退する道筋をつけた。
後発品を手掛ける最後の大手新薬メーカーの第一三共が諦めた第一三共エスファ。クオール傘下なら「成長戦略」を描けるのかと言えば、そうはならないのは明白だ。このニュースに触れても、熱気を帯びてこない原因はそこに尽きる。
それでもクオールが第一三共エスファに飛びついた理由は、「当面の利益」を確保し、中期経営計画の目標(営業利益250億円)を達成する手段との色彩が濃い。メーカーや卸の間では一定規模の製薬ビジネスの獲得は「中村勝さん(会長)の悲願」で熱心にアプローチした結果、実を結んだと言われている。経営上は調剤報酬改定で薬局事業に逆風が吹き続けることが確実視されるなか、第一三共エスファを買収し、収益安定化を図る意味ではひとまずプラス、といったところだ。