医療界には「中学・高校閥」「塾・予備校閥」が存在する。医学部に多数の進学者を出す、いわゆる「医学部に強い高校」がおのずと学閥を形成するのだ。時には、出身大学よりもキャリアを左右することがある。特集『今なら目指せる! 医学部&医者』(全24回)の#3では、知られざる医療界の中学・高校閥、塾・予備校閥を明らかにする。(教育ジャーナリスト 庄村敦子)
出身大学名より開成の名を出す
医局人事をも動かす学閥パワー
医学・医療界には、大学閥に匹敵する、中学・高校閥がある。医学部に多数の進学者を出す、いわゆる「医学部に強い高校」がおのずと学閥を形成するのだ。
医療界で最強の中学・高校閥として知られているのが、岸田文雄総理大臣の母校、男子校御三家の開成(東京)だ。
開成の卒業生で、泌尿器科医の五本木クリニック院長・桑満おさむ医師によれば「開成出身の医師は出身大学より開成の名を出すケースが圧倒的に多い」。同じ男子校御三家の麻布、武蔵が洗練された校風なのに対し、東京下町に位置し「家庭環境の多様性に富み質実剛健、泥くさい関係性が団結力の源ではないか」と分析する。
開成の学閥力を象徴するエピソードがある。開成出身の医師が病院長を務めていた東京都内の基幹病院Aで東京大学が医師派遣を引き揚げた際、病院長が東京都内の私立大学Bで教授をしていた同窓生に頼み込み、その大学からの医師派遣が決まったという。開成閥のパワーは医局人事をも動かすということだ。