生きているうちに
財産を渡す「贈与」

 事実婚のパートナー、甥や姪、親しい友人、慈善団体など第三者に財産を譲りたい場合、前述の遺贈のほかに「贈与」という方法もあります。

 贈与には大きく分けて「生前贈与」と「死因贈与」があります。

 生前贈与は存命中に他者に財産を渡すものです。受け取る側に贈与税がかかりますが、年間に受け取った贈与額が110万円以下の場合は非課税になるため、110万円超えの金額を贈与したい場合はこの制度を利用して1年単位で少しずつ贈与していきます。これを「暦年贈与」といいます。

 ただし、受け取るのが相続人の場合は、贈与者の死亡前3年以内の贈与に贈与額が加算(生前贈与加算)されてしまいます。生前贈与したい場合は早めに行いましょう。

画像05_生前贈与の4つのメリット贈与は自分が望む相手に財産を渡せるのが最大のメリット。相続人になれない甥や姪に財産を渡すことができる。 拡大画像表示
書影『子のいない人の終活準備』(扶桑社)『子のいない人の終活準備』(扶桑社)
曽根恵子 著

 相続や遺贈を受けない人は生前贈与加算の対象外です。また、婚姻20年以上の夫婦が、居住のための住宅や住宅購入資金を配偶者に贈与する場合は、最大2000万円が非課税になります。

 死因贈与は、「私が死んだらこの財産を贈与する」という契約を結び、死後に贈与することです。「介護してくれたら財産を贈与する」といった条件付きの「負担付死因贈与」にもできます。契約は口約束も認められますが、トラブルを避けるため書面を作成すると確実です。

 ただし、契約となるため18歳以上(親の同意があれば未成年でも可)に限られます。また、相続税の課税対象となります。