「総理は日曜日(5月28日)にじっくり考えられたようだ」――。翌29日、首相の岸田文雄は長男で首相秘書官の翔太郎を更迭した。
「公的立場にある政務秘書官として不適切である。けじめをつけるため交代させた」
翔太郎の更迭理由は、今さら説明するまでもないだろう。昨年12月30日に首相公邸で親族と忘年会を開き、その写真が外部に流出した。首相公邸という「最高権力者の館」での度を越した振る舞いはテレビのワイドショーに格好の話題を提供した。5月25日に「週刊文春」が報じると、瞬く間に写真はネット上に拡散された。
岸田は、地元広島で開催した主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)を警護上の問題もなく無事に終えたばかり。サミットは、ウクライナ大統領のゼレンスキーが出席したことで、注目度は格段にアップした。“岸田株”がうなぎ上りになるとみられたが、その中で翔太郎問題が拡大した。
国会でも取り上げられ、岸田は野党側の追及の矢面に立った。「公私混同」に対する世論の目も厳しく、内閣支持率にも直結した。29日付朝刊の日本経済新聞が掲載した世論調査の結果は5ポイント減の47%。日経は翔太郎に関する質問をしていないが、下落の理由は翔太郎問題以外に考えにくい。朝日新聞の支持率は8ポイント上昇して46%になったが、翔太郎問題に関しては、濃淡の違いはあっても「問題」があるとの回答が76%に達した。