安倍晋三元首相の銃撃事件を発端として、宗教と「政治・カネ」への関心が大きく高まっている。しかし、宗教への無理解が誤解を生む側面も無視できない。そこで、経済メディアならではの視点で新宗教を切り取った週刊ダイヤモンドの特集を再掲し、特集『「新宗教」大解剖』としてお届けする。#6では、創価学会の経済圏を取り上げる。創価学会の本拠地を歩くと、今も膨張を続ける“創価村”の姿がそこにはあった。一方で国内市場の縮小は避けられない。学会の知られざる海外戦略を紹介する。
創価学会の関連施設の
資産価値だけで約1.8兆円
JR信濃町駅(東京都新宿区)を出ると、すぐに建設工事現場に出くわした(写真〈1〉)。標識の建築主には、創価学会理事長の長谷川重夫氏の名が記されている。
ここは2019年11月開館予定(雑誌掲載当時、以下同)の「創価学会総合案内センター」建設地だ。信濃町を訪れた会員やその友人らに周辺施設の案内サービスや休憩スペースを提供する。国内外から巡礼に訪れる学会員を“おもてなし”するため、創価村の入り口に構える観光案内所のような存在となりそうだ。
外苑東通りの民音音楽博物館(写真〈2〉)の隣の敷地では「創価学会世界聖教会館」の建設工事が進んでいた(写真〈3〉)。もともとは東京電力病院があった土地だが、福島第一原発事故後の14年に東電が土地と建物を不動産会社に100億円で売却。それを買い取ったのが学会だったというわけだ。
会館は聖教新聞本社の新社屋となり、同社によると19年11月18日の学会創立記念日の落成を目指す。
創価村の中心といえば、13年に完成した広宣流布大誓堂(写真〈4〉)だ。その周辺には土産物店が並び(写真〈5〉)、「大勝利豆」「勝利のたまご」といった学会員がいかにも好みそうなネーミングの菓子類が売られていた。
大誓堂の裏手では、かつて池田大作氏がラジオ体操を行っていたという広場「常楽園」が取り壊され、「創価宝光会館」の建設工事が行われていた。こちらは現在の「接遇センター」に代わる施設で、20年5月開館予定だ。
ダイヤモンド編集部が「週刊ダイヤモンド」16年6月25日号で特集した「創価学会と共産党」でも、約70の学会施設がひしめく創価村を紹介したが、それからわずか2年余りの間でこれだけの新たな建設が始まっていたわけだ。
前回特集では、これら学会関連施設の推定資産価値は約1兆8387億円に上ると算出。寄付、新聞・出版事業、墓苑事業という三大収益源を核に、多業種のコングロマリットを形成する姿は「S(創価学会)経済圏」と呼ばれる。
だが、これらは全て会員に依存したビジネスだということを忘れてはならない。
多死社会時代に墓苑事業は活況を呈するだろうが、墓が売れるということは、貴重な収益源である寄付の供給者が減るということだ。公称発行部数550万部の「聖教新聞」は、会員の多部数購読に救われてはいるが、一般紙と同様に今後の衰退は避けられない。
縮小の一途をたどる国内の状況を鑑み、ある学会幹部は「海外に打って出るしかない。グローバル化で現状を乗り切る」と明かす。
次ページでは、創価学会の知られざる海外戦略の一端としてインド市場攻略の歴史を解説する。インドの布教活動におけるセオリーとは逆のことを行いながらも、実はそこには長期的な視点に基づいた創価学会のしたたかな戦略があった。