富裕層を親や祖父母に持つ「親リッチ」は、金融ビジネスにおける次世代の重要セグメントである。特に国内のリテール資産運用ビジネスにおいて、彼ら・彼女らは将来、富裕層として重要な顧客の一部を占める可能性が高い。しかし、これまで親リッチはあくまで富裕層の家族として扱われることが多く、直接のアプローチ対象としてフォーカスが当たることは少なかった。金融機関は親リッチの特徴や考え方を理解した上で、付加価値の高い非対面チャネルも構築してアプローチしていく必要がある。
次世代有望顧客「親リッチ」は280万人
当社では、親または祖父母が純金融資産1億円以上を保有している20~50代を「親リッチ」と名付け、金融ビジネスにおける次世代の重要セグメントとして注目している。彼ら・彼女らは、国内リテール資産運用ビジネスにおいて特に重要な顧客となる。
親リッチは将来、親の資産を相続し増やすことが期待されるだけでなく、相続前の時点においても、同年代の平均的な人と比較して金融ビジネスの顧客としてのポテンシャルが高いことが分かっている。当社が2022年に実施した調査では、20~50代の年収の平均値は一般の男性が492万円、女性が202万円なのに対し、親リッチの男性が665万円、女性が271万円となっている。また、自分で管理・運用する金融資産額の平均値も、一般の男性が462万円、女性が365万円なのに対し、親リッチの男性が1,152万円、女性が743万円となっている。男女ともに親リッチの方が一般の人に比べて3割以上年収が高く、2倍以上の金融資産を管理・運用している。
このように、リテール資産運用ビジネスの有望顧客である親リッチは、日本における富裕層世帯の増加を背景に近年、急速にその数を増やしている。当社では2年ごとに富裕層世帯数の推計を実施しており、直近の推計(21年)では、金融資産を1億円以上保有する「富裕層」は国内に149万世帯存在する。この数は過去10年間で一貫して増加しており、10年間で約1.8倍となった。これに伴い親リッチもその数を増やしており、21年時点で約280万人の親リッチが存在すると推計している。