参天製薬が起死回生の「近視薬」で狙う“危険な市場”と捨てる市場Photo:PIXTA
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 日本が誇る「スーパーマリオ」の快進撃が続いている。東宝東和は5月24日、映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の全世界興行収入が1700億円を突破し、全世界興行成績のアニメ作品で歴代3位になったと発表した。85年にシリーズ第1作目がゲームで登場して以来、その人気は衰えない。任天堂が83年に家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」を発売してから40年。今やゲームは日本発のサブカルチャーとして世界に認められるようになった。と同時に、この40年間で子どもの視力も悪化している。

 文部科学省の学校保健統計調査によると、小学1年生の4人に1人は視力が1.0未満。79年時点では14.9%だったが、21年には24.8%に増加した。中学生だと約6割、高校生になると7割に達し、成人になると眼鏡やコンタクトレンズをしていないほうが少数派になりつつある。視力低下の要因は、家庭用ゲーム機に加え、近年のスマートフォンの普及、さらに新型コロナウイルス感染症対策でオンライン学習が広がったことが要因とされる。

 ファミコンばかりして「目が悪くなる」と子どもの頃に叱られていた世代も今では親となり、我が子に「スマホばかり見ているんじゃない」ともっともらしく言うようになった。こんな調子では、日本人の視力はますます低下するということで、危機感を募らせた日本眼科学会などが、今年から6月10日を「こどもの目の日」に制定。「はぐくもう!6歳で視力1.0」をスローガンに啓発活動を進めるという。視力の低下、とくに近視の増加は世界的な潮流のようで、各国が対策を打ち出しており、中国では8歳以下の子どもはテレビゲームを禁止する強硬策まで出てきている。それほど近視問題は深刻なのだ。ただ、製薬企業にとってはビジネスチャンスで、参天製薬は近視市場の開拓により起死回生を図ろうという試みだ。