新型コロナウイルス感染拡大は、人々の暮らし・働き方の価値観に変化を与えた。こうした変化は不動産業にも大きな影響を及ぼし、分譲マンション価格の高騰、テレワークによるオフィスの空室率上昇、人流抑制などで住み替え需要が激減したシングル向け賃貸マンションなど、用途やエリアによって明暗が分かれることとなった。2023年に入り、経済活動の再開が本格化しつつある。アフターコロナを見据えた上で、不動産業の新規開業が多い「活気ある街」とはどこか。東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースから、東京23区、全国の県庁所在地、政令指定都市を対象に、不動産業の新設法人数を軸にした街の「活性度」を算出した。(東京商工リサーチ経済研究室 平島由貴)
※不動産業を対象に、(1)新設法人数(2)新設法人率(不動産企業総数に占める新設法人数)(3)新陳代謝率(倒産、休廃業・解散に対する新設法人の割合)(4)2019年から2022年の新設法人数増減率(5)エリア別の1企業当たりの世帯数(6)2020年1月から2023年1月の公示地価増減率を市区ごとに算出し、エリア別「活性度ポイント」を算出した。
※活性度ポイント:項目(1)~(6)をポイント化し平均したものを活性度ポイントと定義付けた。各項目のポイントは、一般的な偏差値の公式「(各項目の数値-項目の平均)÷標準偏差×10+50」で算出した。
活性化度ランキング上位15区で
最多は東京都、2位は福岡県
「活性度」トップは、「東京都港区」で67.8ポイントだった。新設法人数はコロナ禍前の2019年比で17.1%減少したものの、556社と突出し、ポイントを上げた。2位は「東京都千代田区」、3位は「東京都中央区」がランクインした。日本を代表する大企業が集中し、大規模な不動産開発など、さまざまな用途の不動産が集積する都心3区の強さを浮き彫りにした。
東京都以外では、福岡県のポイントが高い。4位に「福岡市中央区」、6位に「福岡市博多区」、15位に「福岡市南区」がランクインし、「中央区」「博多区」エリアは公示地価上昇率の高さが目立つ。九州最大の都市である福岡市は人口が増加をたどり、「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」などの大規模再開発計画や高層ビル、大型商業施設、タワーマンションの建設が相次ぐ。企業誘致も盛んで、さらなる人口増への期待も高く、福岡進出を狙う企業が多いことも背景にあるとみられる。
上位15位のエリアは、関東10エリア、中部1エリア、近畿1エリア、九州3エリアだった。コロナ禍で浸透したテレワークで郊外への転出の動きも見られたが、分譲マンションなどの価格高騰が著しく、経済活動が活発な東京都を含めた首都圏エリアの力強さを裏付ける格好となった。