宇宙企業編キービジュアル
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宇宙産業は急拡大を続け、2030年代に70兆円に達すると見込まれている。月面開発から火星移住まで世界有数の経営者も関心を寄せる未知の世界だ。そこで特集「ディープテックで行こう!」では、#3~4の2回にわたって「宇宙」分野で注目の「ディープテック」を紹介する。#3は同分野の注目ベンチャー企業6社をお届けしよう。

「週刊ダイヤモンド」2019年10月26日号第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

宇宙 注目ベンチャー企業1
【ispace(アイスペース)】
超小型ロボで月の水資源を探査

 米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)、米起業家のイーロン・マスク氏……。こうした経営者たちが今、新たな世界を実現しようと熱い視線を寄せるビジネス分野がある。「宇宙」だ。

 マスク氏は人類の「火星移住」を目標に、自身がCEOを務めるスペースXを通じ、まずは2024年までに人類を火星に送り出す計画を掲げる。一方、ベゾス氏が「資源の宝庫」と語り、実現へ乗り出すのが月への植民計画だ。

 そんな月に人類が降り立ったのは史上12人にすぎず、1972年を最後に途絶えたまま。だが、宇宙開発が急速に進む中で、アイスペースの袴田武史CEOは「40年には月に1000人が居住し、年間に数万人が月面旅行に訪れる時代が来る」と展望する。同社は、その際に必要不可欠な二つのものを提供しようと試みている。

袴田武史CEO
「2040年には月に1000人が居住する」と語る袴田武史CEO(上)。同社開発の小型着陸船(下左)。地下資源探査機(下右)

 一つ目は月面着陸船だ。同社は約30キログラムの積載量の小型着陸船を開発しており、21年の月面着陸に向けて準備を進めている。

 もう一つ必要なもの。それは、「月の水」だ。月の表面は砂に覆われているが、米NASA(航空宇宙局)は、その下に60億トンもの氷があると推定している。それを今、世界中の宇宙開発企業が発掘すべく、探査機(ローバー)を飛ばそうと計画中。アイスペースはそのうちの1社として、世界的に有力視される存在なのだ。

 なぜ、世界は氷(水)の探査に夢中なのか。それは月面で人が住む際に不可欠な水を地球から運ぶ場合、1リットル1億円という莫大な費用がかかるだけに、コスト構造を一変させる力を持つからだ。

 さらに注目されるのは、水を電気分解することで得られる燃料だ。燃料は宇宙ロケットの重量の多くを占めるが、月の水は、月を拠点にした火星や小惑星探査の燃料となり、宇宙内の移動コストの大幅な削減につながるとみられている。

 また、月から地球の衛星軌道上の施設に資源を運ぶコストも、地上から運ぶ場合の百分の1ほどになるという。つまり、月面で氷を掘り当てられれば、宇宙開発は大きく前進する。他にも、月にはレアメタルなどの地下資源が豊富にあることが判明済み。その探査機も小型軽量化が課題だが、同社では世界最小で重さ4キログラムの「ルナローバー」がほぼ完成。23年に月へ打ち上げることが決まっている。