大企業による防衛関連事業からの撤退が相次いでいる。すでに、コマツ、三井E&Sホールディングス、住友重機工業などが相次ぎ防衛装備品の製造を打ち切った。そんな中、またしても「大物」とされる名門企業が撤退に向けての準備を進めていることがダイヤモンド編集部の調べで分かった。特集『軍事ビジネス&自衛隊 10兆円争奪戦』(全25回)の#1では、今まさに撤退を検討している企業の実名を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 村井令ニ、千本木啓文)
「コマツ撤退」を超える大打撃
衰退止まらぬ防衛産業の末路
「日本の防衛産業にとって非常に重要な企業だ。扱っている品目が多過ぎるので、その企業が(防衛産業から)抜けてしまっては大変なことになる」
防衛省幹部は、ある大手企業が防衛関連事業からの撤退を検討していることについて強烈な危機感を持っている。
その企業が生産しているのは、自衛隊の戦闘機や艦艇、戦車といったいわゆる正面装備ではない。それらの重要部品を担当する「黒子」企業だ。一般的には、防衛関連事業を展開している企業としての知名度が高いわけではないが、ある防衛省関係者によれば「日本を代表する防衛企業の一つ」だという。
近年、国内製造業では自衛隊向け防衛装備品の製造を打ち切る企業が相次いでいる。コマツが軽装甲機動車(前線にいる兵士の足となる車)の、住友重機械工業が新型機関銃の生産をストップするなど、撤退ラッシュとなっているのだ。
とりわけ、コマツは防衛省と直接取引する「プライム企業」だったことから業界関係者の衝撃は大きかった。くだんの防衛省関係者によれば、「(コマツが製造していた)装甲車という単品の装備よりも、幅広い装備品に入り込む部品の撤退は影響が甚大だ」と打ち明ける。
果たして、水面化で撤退作業を進めているのはどの企業なのか。次ページでは、その意外な実名を明らかにする。新たに表面化した名門企業の撤退は、ただでさえジリ貧の防衛産業に大打撃を与えることになることだけは間違いない。