宇宙研究編キービジュアルPhoto:123RF

宇宙産業は急拡大を続け、2030年代に70兆円に達すると見込まれている。月面開発から火星移住まで世界有数の経営者も関心を寄せる未知の世界だ。そこで特集「ディープテックで行こう!」(全14回)では、#3~4の2回にわたって「宇宙」分野で注目の「ディープテック」を紹介する。#4は同分野の注目2研究をお届けしよう。

「週刊ダイヤモンド」2019年10月26日号第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

宇宙 注目研究1
【秋田大学大学院国際資源学研究科】
ヘビ型ロボットで月を掘削

 月の地下にはおよそ60億トンの水が氷の状態で眠っている――。そんな「月の水」の発掘が、月面開発の最大のテーマとなっていることをご存じだろうか。

 その層は、表面から数十センチメートルの深さにあると考えられているが、実はこの月の砂を掘り進めることは技術的に難しく、まだロボットが月を掘った実績はない。秋田大学の川村洋平教授は、この月の探査に応用できる掘削用小型ロボット「DigBot(ディグボット)」を開発する。

「海中や空中より地中の探査が圧倒的に難しい理由は、土や砂の反力が大きく、かなりの圧力がなければドリルが入っていかないこと。私の開発した二重反転ドリルは、逆向きに回る二つのドリルが反力を相殺しながら掘っていくので、この課題を解決している」と川村教授は言う。

掘削用小型ロボット「DigBot(ディグボット)」掘削用小型ロボット「DigBot(ディグボット)」

 直径約3センチメートル、長さ25センチメートルの掘削機の先端には左右に回る二つのドリルが付いている。月面上を模した砂の中にも「シューッと真っすぐ入っていける」ため、月の開発にはもってこいだという。さらに川村教授は、ヘビの前進運動をまねた推進機構を付け、真下だけではなく左右にも推進し、自動で地上に戻るディグボットを開発中だ。

 月へ運ぶには軽量小型であることが大前提で、ディグボットはその点も適している。ただモーターの熱をどう逃がすかという課題は残されており、水冷などの方式も検討中だ。

 同機は地耐力調査にも使える用途があり、建機メーカーなどとも共同開発中。月と地球の両方で、地面の掘削にイノベーションを起こせる可能性が大きいと川村教授は言う。