新型コロナウイルス禍が落ち着き始め、企業業績への影響も緩和されてきた。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった難題がいまだに日本企業を苦しめている。その状況下でも、企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は任天堂、ネクソンなどの「ゲーム」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
Switch販売減に苦しむ
任天堂が2桁減収
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のゲーム業界5社。対象期間は2022年11月~23年3月の直近四半期(5社いずれも23年1~3月期)としている。
各社の増収率は、以下の通りだった。
・任天堂
増収率:マイナス18.3%(四半期の売上高3065億円)
・ネクソン
増収率:36.3%(四半期の売上収益1241億円)
・バンダイナムコホールディングス
増収率:マイナス5.4%(四半期の売上高2469億円)
・カプコン
増収率:111.3%(四半期の売上高463億円)
・スクウェア・エニックス・ホールディングス
増収率:マイナス4.4%(四半期の売上高877億円)
ゲーム業界5社では、ネクソンとカプコンが増収を果たした。中でもカプコンは、前年同期(22年1~3月期)の2倍超となる大幅増収だ。
ただしカプコンは前年同期に大型の新作タイトルがなく、四半期増収率がマイナス28.1%と落ち込んでいた。今回分析対象とした23年1~3月期は新作タイトル「バイオハザード RE:4」(3月24日発売)などの好調が追い風になったとはいえ、前年同期からの反動増の影響にも留意すべきだろう。
一方、“ゲーム業界の盟主”といえる任天堂は2四半期連続で減収となった。同社は22年11月に「Nintendo Switch」向けゲームソフト「ポケットモンスター スカーレット/バイオレット(SV)」を発売。23年3月末時点で累計2210万本を売り上げたが、業績は苦戦が続き、23年3月期の通期決算でも減収減益に沈んでいる。
任天堂が苦しんでいる要因は、これまで本連載で解説してきた通りゲーム機「Nintendo Switch(以下Switch)」の販売減だ。
ハードウェアを手掛ける競合他社にも当てはまるが、任天堂は「NINTENDO64」「ニンテンドー ゲームキューブ」といった歴代の家庭用ゲーム機を投入後、需要の一巡とともに業績が低下。新機種投入によって息を吹き返すというサイクルが続いてきた。
Switchは17年の発売から7年目を迎え、世間では「次世代機」の登場を期待する声も出ているが、同端末の売れ行きは具体的にどこまで落ち込んでいるのか。
次ページ以降では、各社の増収率の時系列推移を紹介と併せて、任天堂の業績について詳しく解説する。