管理職になりたての頃は、何をどうすればいいのか悩むことが多い。チーム内で率先して働きながら、若手の育成や業務管理など、プレーヤー時代とは異なるタスクが多くあり、はじめは「何から手をつければいいのだろう…」「やるべきことが多すぎないか…」と戸惑ってしまう。
そんな悩めるリーダーたちにおすすめの書籍が、株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏の著書『とにかく仕組み化』だ。大人気シリーズ最新刊の本書では、「人の上に立つためには『仕組み化』の発想が欠かせない」というメッセージをわかりやすく説く。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、「管理職になりたての人」がやりがちなNG行為について解説する。(構成/種岡 健)
「責任」によって、人はリーダーになっていく
管理職になりたての人に要注意なことがあります。
それは、「責任感」という言葉の危うさです。
「あの人は責任感のある人だ」と、生まれ持った性質かのように、「属人化」の意味として言われることが多いでしょう。
しかし、この言葉には問題があります。
明文化したルールを守り、仕組みを運営すること。
そのルールのもとで、仕事を進めたり、部下を守ったり、上司に情報を伝えたりすること。
そのように「責任を果たすこと」は、本来なら全員ができることです。
「責任感のある・なし」で語られるものではありません。
責任の意味を正しく捉えれば、全員が「責任感のある人」であって当然なのです。
「上司は1人」の深いワケ
たとえば、あなたが開発部長であれば、「部全体の数字の責任」を負っている立場であることを認識するでしょう。
開発部長の部下の課長は、「現場での数字」に責任を負っている立場です。
だから、開発部長が直接現場に指示をしてしまうことは、「責任感のある行動」ではありません。
それをすると、現場の社員が、誰が上司かわからなくなります。
誰からの評価を得なければいけないのか、誰からの指示を実行しなくてはいけないのかに勘違いを起こします。
課長は、課の数字に対してしっかりと責任を持っています。
そしてさらに社員は、課長から設定された目標の達成に集中する。
自分はどういう責任を持っていて、そして誰からの評価を得なければいけない存在なのかを正しく認識します。
ここで大事なポイントは、「上司は1人である」ということです。
1人だから部下は迷いません。
でも、1人だと、「評価が属人化するのでは?」と思うかもしれません。
だからこそ、明文化がセットなのです。
どういう責任を持ち、何をすれば評価されるのか。
客観的に誰が見てもわかるように、ちゃんと文章にして共有するのです。
管理職になりたての人は、つい評価や判断を別の人にあおいでしまいます。
しかし、あなたの部下のことは、その上司であるあなたが判断しないといけないのです。
「責任」と「権限」の関係を理解しよう
上司が1人であれば、責任を果たせます。
評価を得るために何をしなくてはいけないのかが、「責任を果たす」ということだからです。
そのために獲得するのが、「権限」です。
権限とは、「自分が自由に動ける範囲」が明文化されているということです。
「自分がどのエリアで売ればいいのか」
「どういう手法をとっていいのか。逆に、何がダメなのか」
その線引きの中で、自由に自分で決めるのです。
逆に言うと、マネジャーは、「権限がしっかり足りている状態をつくらなくてはいけない」ということです。
なので、部下には、
「もし、この責任を果たす上で自分の権限が足りないと感じたら、そのことを報告してください」
と伝えておく必要があります。
部下には、責任を果たせなかったときに、あとから、
「権限が足りなかったから無理でした」
という言い訳が通用しないことを伝えておくのです。
そういう仕組みを整えておくと、部下からどんどん「権限の獲得」の相談や報告があがってきます。
こうなると、組織は非常にいい状態です。
それを上司が判断して決めることになります。
たとえば、新規開拓として、「静岡市で営業売上2000万円を達成する」という目標を与えられたとします。
ゼロから新しく開拓するので、認知度を広げるために、
「広告費100万円の予算を付けてほしい」
という権限を要求します。
そして、静岡市で影響力のあるラジオ番組を調べ上げる、などの施策ができます。
こうやって、仕事を進める上での「責任」と「権限」の認識にズレがない状態をつくります。
こうしたマネジメントをすれば、部下にとっても、次のポストでやるべきことが明確になり、より具体的なキャリアを描けるというメリットにもなります。
(本稿は、『とにかく仕組み化』より一部を抜粋・編集したものです)