人の上に立つと、やるべき仕事や責任が格段に増える。メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理など、プレーヤー時代とは異なるタスクが多く発生し、はじめは「何から手をつければいいのだろう…」と戸惑ってしまうだろう。
そんな悩めるリーダーたちにおすすめの書籍が、株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏の著書『とにかく仕組み化』だ。これまでのシリーズ『リーダーの仮面』『数値化の鬼』でも「自分のやるべきことが見つかった」「日々の仕事に役立ちすぎる」「何度読んでも言葉が深く刺さる」など、多くの賛同の声を集めた。そんな大人気シリーズ最新刊の本書では、「人の上に立つためには『仕組み化』の発想が欠かせない」というメッセージをわかりやすく説く。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、「管理職失格な人」に共通する“たった1つの特徴”をご紹介する。(構成/種岡 健)

「管理職失格な人」に共通する、たった1つの特徴Photo: Adobe Stock

「全員の納得」という呪縛

 人の上に立つようになると、新しいことを決めることが求められます。

 新しいルールを決めることが増えるでしょう。

 そして、新しい仕組みを取り入れるとき、必ず反発が起こります
 政治でも、100%全員が満足できる政策はありません。

 どこかで「線引き」が必要になります。
 会社での判断軸は、1つです。

「ちゃんと成長したい人が成長できるかどうか」

 それだけです。
 長く働き、既得権益を持っている人は、ルールが「曖昧」なほうが都合がいいはずです。組織が変わらないほうが居心地がいい。
 そこにメスを入れるのが、経営者や管理職のように「人の上に立つ人がやるべきこと」です。

「成長を諦めた人」に負けるな

 会社組織の中には、「成長を諦めた人たち」もいるかもしれません。
 そういう人たちからの反発に負けないでください
 活躍する人が辞めるような組織にしないでください

『ビジョナリーカンパニー』という名著に、「誰をバスに乗せるか」というテーマがあります。
 メンバーを決めて、バスはとりあえず進みます。

 そして、次がポイントです。
「不適切な人にはバスを降りてもらう」というのです。
 乗せた全員が納得する目的地を決めることは不可能です。
 バスが前に進むにつれて、降りなければいけない人が出てくることは、仕方のないことなのです。

「ここにいれば成長できる」という、意欲の高い人が残り続けるようにする。
 その判断を間違えないようにしましょう。

ビジョンやパーパスも「仕組み」である

 いわゆる、「ミッション、ビジョン、パーパス」など、組織に必要な概念には、どんどん新しいものが現れます。
 しかし、本質は変わりません。

 組織における価値観は当然あります。
 それは、「企業理念」に紐づきます。

 そういった、「抽象度の高いことを考えること」と、「今日一日にやる仕事のこと」は、いったん切り離して考えるべきです。
 もちろん向かっている方向性が同じであることは大前提です。

 それを理解するために、「仕組み化」の重要性を、ぜひ理解してください。
 きっと、「企業理念」などの意味が深く浸透するはずです。

 まずは今日一日の行動を、ルールに従って進める
 そのための「仕組み」をつくることからはじめましょう。
 何かにつけて、ビジョンやパーパスを持ち出して、「いま、やる気の起こらない言い訳」「目の前のことから目を背ける理由」にするのはやめましょう。

「管理職失格かどうか」を試す質問

 では、最後に「質問」です。

質問:あなたは「全員の納得」を得ようとしていないでしょうか

 いかがでしょう。

 既得権益を持っている人は、ルールを曖昧にしておきたいものです。
 成長を諦めた人たちも、頑張らない理由を欲しがっています。

 そういう人たちからの反発に負けないようにしましょう。
 全員の納得を公平に得ようとすることは、管理職失格の行動です。

 そうならないためには、

「成長したい人のために決断をする」

 というスタンスを貫くことです。そこでブレないようにしてください。

(本稿は、『とにかく仕組み化』より一部を抜粋・編集したものです)