写真:東京駅前広場,夕景,経済写真はイメージです Photo:PIXTA

6月16日、「経済財政運営と改革の基本方針2023」、いわゆる「骨太の方針2023」が閣議決定された。閣議とは言っても午前中の定例閣議ではなく、夜開かれた持ち回り閣議において、である。この閣議に先立って、骨太の方針の案について議論するため、令和5年第9回経済財政諮問会議が、第20回新しい資本主義実現会議との合同会議という形式で開催されている。だが、この合同会議、その所要時間はなんと18時から18時25分までの、たった25分であった。このように、議論をさせず、異論を排除して、極めて独善的に決められた骨太の方針2023であるが、どのような問題があるのだろうか。その核心部分を解説する。(政策コンサルタント 室伏謙一)

所要時間わずか25分
合同会議という「儀式」

 6月16日、「経済財政運営と改革の基本方針2023」、いわゆる「骨太の方針2023」が閣議決定された。閣議とは言っても午前中の定例閣議ではなく、夜開かれた持ち回り閣議において、である。この閣議に先立って、骨太の方針の案について議論するため、令和5年第9回経済財政諮問会議が、第20回新しい資本主義実現会議との合同会議という形式で開催されている。

 新しい資本主義は岸田政権の重要政策の一つであり、同会議は岸田政権の重要会議と言っていい位置付けである。この合同会議では、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」の案について議論されている。

 それだけ重要な文書について議論し、そして閣議決定に向けて決定しようというのなら、ある程度時間を要したであろうと思うのが当然であるが、この合同会議、その所要時間はなんと18時から18時25分までの、たった25分であった。要するにこれらの会議で決めたという形式を整えるための「儀式」でしかなかったということである。

 役所の会議に儀式的なものは付きものではないのか、といった意見が聞こえてきそうであるが、確かに国の審議会などはシナリオが決められ、それに従って淡々と議論が進められていくし、事前に徹底した根回しは行われているが、事務方が想定しなかった意見が出されることもある。したがって、「儀式」のようだが「儀式」ではない、というのが実像である。

 しかも、両文書は今後の日本政府の経済財政政策、法令改正の方向性を示し、その根拠ともなるものであるから、「儀式」などで決めてもらっては困る(なお、本稿では骨太の方針のみ扱うので、新しい資本主義のグランドデザインなどについては別稿に譲る)。

 そもそも、経済財政諮問会議において、骨太の方針の骨子案(項目が記載されたもの)が提示されたのは5月26日の第7回会合においてであり、少子化対策を除く骨太の方針の原案が示されたのは6月7日の第8回会合においてである。それまで、私の聞いている限り、ほとんどの与党議員にさえ原案は示されなかったようである。