低迷が続くわが国の仕事満足度

 冒頭で紹介した通り、この調査において、わが国で日々の仕事に喜びや満足感を持つ人の割合はわずか5%と世界最低だった。その推移を見ると、リーマンショック後、小幅ながら仕事への満足度が高まった期間はあった。アベノミクスの好景気が背景にあっただろう。そして19年から22年までは5%で推移している。

 東アジア諸国・地域の満足度を見ると、中国は前年から横ばいの18%だった。韓国は前年から1ポイント低下し、12%。台湾は11%(前年から1ポイント上昇)だった。台湾における上昇は、半導体産業の影響が大きいだろう。

 また、わが国では「日々の業務に対するストレスを感じる」が42%(前年から1ポイント低下)だった。一方、「雇用、所得環境は良いか」の質問に対して、「はい」は25%で、前年から6ポイント低下した。

 もちろんこの調査が全てというわけではないが、わが国の経済状況を踏まえても、「仕事満足度5%」という結果は、さまざまな示唆に富んでいる。世界的な傾向と比較した場合、わが国の雇用、所得環境の停滞は鮮明といえる。

 背景にはいくつかの要因がある。大きいのは、1990年初頭の資産バブル崩壊だ。それ以降、わが国では株式や地価が下落した。個人の消費は減少し、経済全体で「羹(あつもの)に懲りてなますを吹く」とでもいうべき心理が高まった。成長期待の高い先端分野に進出するよりも、既存分野での事業運営を優先する企業が増えた。IT革命への遅れは深刻化した。

 少子高齢化、人口減少も重なり、経済は縮小均衡した。資金調達や設備投資面で海外企業との競争に対応することも難しくなった。今なお、新卒一括採用、年功序列、終身雇用から成る雇用慣行を続ける企業も多い。その結果、わが国企業において、ワークエンゲージメントは低迷した。