KDDIがソラコムの発行済株式の過半数を取得した際には、数百億円のバリュエーション(企業価値評価)が付けられましたが、当時、ソラコムの契約実績は8万回線しかありませんでした。それがスイングバイIPOを公表した2020年には200万回線、2022年11月に東京証券取引所に株式上場を申請した際には500万回線に増加。KDDIグループが持つリソースを有効に活用して、一気に成長を遂げています。上場申請については2023年2月、市況などから判断して一度取り下げたものの、上場を目指す方針は継続するそうです。
ソラコムのケースでは、KDDIが買収時に過半数までしかその株式を取得しなかったことも、メンバーがモチベーションを失わずに成長を目指すことに寄与したのではないかといわれています。
なぜ別会社化した方が
新規事業はうまくいくのか
これまで見てきた大企業の変革による再成長の例では、新規事業を別会社として置くか、内部で改革を進めるか、それぞれにパターンがありました。
マイクロソフトやアップルでは、業績がV字回復するときに別会社を立ち上げたわけではなく、社内改革が成功しています。ただし、どちらもかなり強力なリーダーシップが働いています。マイクロソフトやアップルの変革はむしろ例外で、新規事業を別会社化、あるいは外部から買収した後も別会社として存続させることが功を奏している例は、多いのではないかと思います。
例えばマイクロソフトでも、ソフトウェア開発プラットフォームを運営するGitHubを買収した後、独立した子会社として継続させています。独立していてもGitHubの事業はマイクロソフトの戦略と密結合しており、うまい買収の仕方とガバナンスの効かせ方をしていると感じます。