GMの自動運転技術取り込みを
成功に導いたクルーズ買収
もう1つの成功パターンは、M&Aの活用です。一例として、ゼネラルモーターズ(GM)のクルーズ買収を取り上げてみましょう。
米国の自動車メーカーは低迷が続き、GMも一時、連邦破産法11条による企業再建手続きを取るまでに至りました。しかしその後、経営を立て直し、現在は電気自動車(EV)や自動運転の分野で良いポジションを築いています。その背景には、自動運転技術関連スタートアップのクルーズを買収したことがあるといわれています。
クルーズは2013年の創業。2016年にGMに買収されて社名をGMクルーズとしましたが、その後も独立した企業として存続しています。一時はソフトバンクビジョンファンドから資金調達をしていたほか、ホンダが出資・協業を行うなど、GM以外からも資金を調達しているスタートアップです。
GMクルーズは現在、サンフランシスコで無人運転のタクシーサービスを提供しています。スマートフォンでクルマを呼び、行き先まで乗って降りるという体験を実現しているのです。同様のサービスは、グーグルの自動運転車開発部門から分社化したウェイモなど、他社が他の都市でも提供しています。しかし、一時は破産しかけた“重厚長大”産業の、動きが遅いのではないかと思われる大企業の傘下でこれを成し遂げたことは、すごいことだと思います。
なぜ、GMは先進的な取り組みを実現できたのでしょうか。クルーズの最高コミュニケーション責任者であるクリスティン・ボイデン氏らの発言などを総合すると、クルーズが顧客にフォーカスする考え方を大切にしており、それをGMにもうまく浸透させることができたことが、大きかったようです。