2000年から2014年までマイクロソフトのCEOを務めたスティーブ・バルマーは、ビル・ゲイツのもとでマイクロソフトを大企業へと導いた人物です。しかし、ウィンドウズやオフィスといったパーソナルコンピュータ時代の盟主としてのマイクロソフトにこだわり、スマートフォン事業などでも垂直統合的な自社ブランドにこだわって、マイクロソフトの低迷時代を招いたともいわれます。

 一方、2014年にCEOの座に着いたサティア・ナデラは、バルマーの戦略をパッと転換し、ウィンドウズやオフィスに力は入れながらも、クラウドへのシフトを推し進めました。スマートフォンにおいても「ウィンドウズフォン」を諦め、既存のスマートフォン上のシステムや開発ツールにフォーカスすることにより、とてつもない成長を遂げています。

従来路線をドラスティックに
変更して生まれ変わった

 外資系企業ではしばしば、トップが変わるとその下のキーメンバーも変わります。トップが入れ替わることによって人が入れ替わり、それによって方針を大きく変えているのです。マイクロソフトと同様の事象はアップルでも起きています。

 アップルは、一時は経営陣や取締役会との折り合いが悪くなって退職したスティーブ・ジョブズを、1997年に暫定CEOとして呼び戻しています。ジョブズは他社にOSをライセンスしてハードウェアを作らせるやり方をやめ、もう一度完全にクローズな垂直統合モデルに変え、ハードウェア、ソフトウェアからサービスまで完全に連結したユーザー体験を作り上げることに成功しました。

 その後もiPodやiTunesなどを世に送り出し、iPhoneやiOSにつながる、いわゆるコンテンツビジネスやサービスビジネスの足がかりをアップルが築けたのは、ジョブズが一気に大なたを振るったことが大きく影響しています。

 マイクロソフトもアップルもCEOの交代により、カニバリゼーションを恐れずに従来路線をドラスティックに変更できたのです。