1万件を超える「幼児から高校生までの保護者の悩み相談」を受け、4000人以上の小中高校生に勉強を教えてきた教育者・石田勝紀が、子どもを勉強嫌いにしないための『勉強しない子に勉強しなさいと言っても、 ぜんぜん勉強しないんですけどの処方箋』を刊行。子どもに失敗してほしくない、教育熱心な人ほど苦悩を抱える大問題への、意外な解決法を提案します。

「子どもが自分から勉強しない」と言う親のつまずきポイント2つPhoto: Adobe Stock

子どもが気になってしょうがない

 前回で説明したとおり、「動物園型」「牧場型」「サバンナ型」の3つのステージを段階的に進めていくことが、子どもの自立をうながすステップです。

 しかし、「動物園型」で育てたあと「牧場型」へ、「牧場型」から「サバンナ型」へ、なかなか移行できないケースが多いのです。

 親がつまずきやすいポイントは2つあります。

 1つは、幼児期に「牧場型」をスタートできず、狭い枠の中に子どもを閉じ込めて自由を奪ってしまうケース。

 たとえ家の中でも、言葉を覚えて動き回れる幼児期以降は、本人の自主性にまかせて自由に遊ばせる時間がとても大切です。

 しかし、勉強や習いごとが1週間ぎっしり詰まっている、遊びの内容もすべて親が決めるなどして、気がつくと小学校低学年になっても高学年になっても、子どもの自由な行動範囲が広がっていないことがあります。

 2つめのつまずきポイントは、中学生になった頃。「牧場型」に移行して行動範囲がうまく広がっていく場合と、うまくいかなくて「動物園型」のままになる場合があるということです。

 中学生にもなると、子どもは親の目の届かないところで行動するようになります。

 それまで牧場の柵を少しずつ広げて、「自分のことは自分でする」という生活習慣を身につけさせ、物事の善悪や危険回避について教えていた場合は問題ありません。

 しかし、「私が見ていないとダメ」「子どもの行動はすべて把握しないと気がすまない」と考える親は、柵を広げて子どもを放牧することができず、親が監視する狭い枠に引き戻してしまうのです。

 親が子どもの将来を不安視し、子どもの欠点、短所をいじるのもこのタイプで、自分の思い通りにならないと、子どもがやりたいことを制止します。

 逆に、教えるべきことを教えないまま、子どもの行動にまったく注意を払わず完全放置してしまう親もいます。この場合、子どもがいつ危険な状態に陥るかわかりません。

例外的な天才タイプには、それに合った関わり方がある

 ただしごくまれに、中学生の頃から将来の夢に向かって、自らサバンナに出ていく早熟な子どももいます。これはいわゆる天才タイプで、高校を中退してアメリカに留学したソフトバンクの孫正義さんや、高校を自主退学した将棋棋士の藤井聡太さんらがこのケースに当てはまります。

 このように子育てのステージをスムーズに移行することは簡単ではありません。

 次回からは、「動物園型」「牧場型」「サバンナ型」の各ステージの特徴と、親の関わり方についてお伝えしていきましょう。

*本記事は『勉強しない子に勉強しなさいと言っても、ぜんぜん勉強しないんですけどの処方箋』から、抜粋・構成したものです。