危機管理の「教訓」になる、キャンドル・ジュンさんの会見

 そこで企業の危機管理担当者が「教訓」としていただきたいのが、キャンドル・ジュンさんの記者会見である。あの会見は典型的な「やらない方がいい会見」だった。

 前回、『キャンドル・ジュンさん「広末涼子は良き妻で最高の母」会見が失敗といえる理由』の中でも触れたが、ジュンさんは「広末家・鳥羽家の子どもたちを誹謗中傷から守る」という高尚な目的を掲げていた。それなのに、広末さんが過去に何度か不倫をしたことや、心が不安定になると濃いメイクをして誰かに電話をかけること、そして相手の鳥羽周作シェフが不誠実だと全世界にぶちまけた。

 この「燃料投下」によって、広末さんと鳥羽さんへのバッシングがさらに強まり、「リンチ」の様相を呈してきたのはご存じの通りだ。

 つまり、彼らの子どもたちへの誹謗中傷をさらに激しくさせてしまっている。「子どもたちを誹謗中傷から守る」という狙いとは真逆の結果を招いているのだ。

 しかも、前回の記事の中でも指摘したが、あの会見はジュンさん自身の危機管としても「悪手」だった。自分の妻の過去の不倫やメンタルの不安定さを、本人に承諾を得ずに世界にさらすということは冷静に考えれば、すさまじい人格攻撃だ。不倫した芸能人にも人権はあるしプライバシーもある。夫だからといって何をしてもいいというわけではないのだ。

 そういう激しい人格攻撃を他者にやれば当然、ハレーションを生む。ジュンさんをこころよく思わない人々から、「じゃあ、あなたはどうなのさ」と人格攻撃が返ってきてしまう。

 広末さんサイドからの報復もあるだろう。また、先ほど紹介した企業のケースではないが、ジュンさんの好感度アップに不満を感じる人からすれば、格好の攻撃のチャンスである。事実、「週刊女性」にジュンさんから暴行を受けた元スタッフ男性は、このタイミングで告発した理由についてこう述べている。

「当時のことは思い出したくないことですし、もう関係ないので、誰かに言うとか何かをするつもりは全然なかった。ですが、あのニュースが出て、涼子さんがすごくたたかれていた。それでう〜ん……と」(週刊女性2023年7月11日号)

「嘘はつかないほうがいいと思います。平和を願っている人がめちゃくちゃ暴力を振るっているんですから」(同上)

 つまり、ジュンさんがあの会見を開いて、「不倫常習の妻をかばう聖人夫」と持ち上げるニュースを見たことで、この男性は告発の「スイッチ」が入ってしまったのだ。

 経営者の「やらない方がいい会見」「言わなくていいリップサービス」で、社内の不満分子による内部告発の「スイッチ」が入ってしまう構造とまったく同じだ。