改定後の料金を「高い」と感じるのは
日本が低迷しつつある証拠

 次に、二番目の説明を試みましょう。経済成長の視点で見て、日本人は東京ディズニーリゾートの値上げについていくことができるのでしょうか。

 冒頭で「バブル当時20代だった私の視点では、当時、東京ディズニーランドはすべての若者をとりこにしていた」と書きました。

 当時の4200円という価格ならば、その時代の若者は比較的気楽にディズニーランドに遊びにいくことができたのです。ところが、1万900円という新価格ではそうはいかないでしょう。

 バブルの時代、日本の1人当たりGDPは世界でもトップランクでした。その当時は国内旅行よりも海外旅行の方が安く、普通の会社員が休暇で香港に買い物に出かけ、ルイヴィトンやエルメスなどブランド物を買いあさることが流行していました。

 日本の1人当たりGDPはドル建てで見るとバブル後から現在に至るまで、大きくは変化していません。1992年に3万2069ドルだったものが2022年に3万3822ドルになった感覚です。ところが、その30年の間に世界の経済は成長しました。

 その結果、IMFが公表する世界の1人当たりGDPランキングでみれば、日本は30位あたりまで順位を下げてしまいました。G7でみれば最下位で、アジアで見ると台湾と韓国がほぼ同水準に追い上げています。そして香港は日本の約1.5倍、シンガポールに至っては2.4倍もの差がついてしまいました。

 結果として起きていることは、インバウンド客からみれば東京ディズニーリゾートの料金設定は妥当な水準で、それほど懐を痛めた感覚もなく支払える金額だというのが一つの事実。

 もう一つの事実として、肝心の日本人消費者からみれば、とてつもなく高い価格に見えるようになってきたのです。

 一億総中流でありかつ、みんなが浮かれていたバブル時代にはあまねく若者を受け入れてきたディズニーリゾートも、その後の日本の経済的な凋落(ちょうらく)と格差の拡大の中で、普通の若者には手が届かない存在になり始めています。

 この価格でもディズニーで休日を楽しもうと考える層といえば、日本人の中でも地方から旅行でやってくる意識として「ハレの日の消費」に相当する観光客と、ディズニーが大好きな推し活のディズニーファンだけに限られてくるのではないでしょうか。