脳の寿命を長くなる理想的な睡眠時間とは

 それでは睡眠時間はどれくらい確保すればグリアの保護、疲労からの回復につながるのでしょうか? これは現実問題として非常に重要で、「とにかく睡眠時間を多く確保せよ」では生活習慣の改善に向けた動機付けが十分にできません。

 睡眠時間と死亡リスクの関連に関しては数百万人規模の多くの被験者を対象とした追跡調査があります。

 概ね、男女ともに7時間睡眠が最も死亡リスクが低い、という結果でした。それ以下でも、またそれ以上でも死亡リスクが上がるという驚きの結果です。

 睡眠時間が少なくなればグリア細胞によるニューロンのメンテナンスが不十分となり、ニューロンの死から認知機能低下へとつながっていきます。認知機能の低下は全ての原因の死亡リスクを上昇させると考えられているのです。

 睡眠時間の取りすぎで生存期間が短くなる点に関しては、原因なのか結果なのかはっきりしません。もともと体調が悪く睡眠時間が長く必要となる人もいるからです。ただし、ニューロンの活動が少なくなればオリゴデンドロサイトへの刺激が減って不活化し、脱落しやすくなることとは関連があるかもしれません。

「脳は適度に使い、正しく休ませる」という姿勢が脳の健康寿命を長くするのに重要です。

 とにかく、睡眠時間を削って頑張る、という姿勢はやめた方がいいでしょう。

 グリア細胞はニューロンを守るために夜間睡眠時に働いていたのです。