何かを食べると便意を催す理由
食事をしてしばらくすると、決まって便意を催す、ということがあるだろう。朝食を摂って家で排便してから出勤する、という人も多いはずだ。便意がないからといって排便せずに家を出たら、歩いているうちに便意を催して後悔することもある。
昼食後も同じである。私が運営する医療情報サイトには便について解説する記事があるが、平日十二時から十三時に顕著にアクセスが集中する。この時間帯に排便する人が多く、必然的に「下痢」や「血便」などで検索する人が増えるからである。
このように、「食事をすれば便が出る」というのは、一見当たり前の事実に思える。だが、よく考えると不思議な話だ。
食べたものが、そんなに早く便になるわけがない。ゆっくりと消化され、腸の運動によって下流に運ばれ、一~二日経ってようやく便として排出されるのだ。
まるでロケット鉛筆のように、腸の中にぎっしり詰まった便が押し出されるというものでもない。前述の通り、食べたものはしばらく胃の中に溜め込まれ、ゆっくりと十二指腸に送り出されるからだ。
つまり、食後に便意を催してトイレに行った時点では、食べたものの大半はまだ胃の中である。
では、なぜ食後に便意を催すのだろうか? 実は、「食べものが胃に入ると大腸の蠕動が促される」というしくみがあるからである。これを「胃結腸反射」という。何かを食べれば反射的に大腸に溜まっていた便が下流に運ばれ、結果として便意を催すというわけだ。
もちろん、個人差はある。普段から便秘気味の人は、そう簡単に便意を催すならどれほど楽かと思うかもしれない。反射に対する体の反応は人によってさまざまである。
(※本原稿は『すばらしい人体』からの抜粋です)