「変化の時代」の経営に欠かせないデザインの力
もちろん、デザインの価値をどれだけ数値化しようと、経営者自身に危機感がなければ合意形成は難しい。会場からは「変化が少ない業界、変革へのモチベーションが低い企業でデザイン経営を動機付けるためのヒントはあるか」という質問も投げ掛けられた。「デザイン経営がもたらす価値の本質」に関わるこの問いにも、ゲスト2人から熱のこもった回答が返された。
「どんなに変化が少ない組織でも、ビジネスの先には必ず人と組織が存在しているし、そうした存在は社会の中で激しく変化しています。それでも自分だけは変わる必要がないと考えているとしたら、それは周囲が見えていないだけです。しかし、見えないものを読むことが、本来あるべき経営ではないでしょうか。デザイン思考は、まさに見えないつながりや本質をえぐり出し、見つめるものだと思います」(平賀氏)
「これまで、日本企業の多くは100円のものを80円や50円で売ろうとしてコスト削減に努めてきました。しかし、グローバルビジネスで成功している企業を見れば明らかなように、体験価値をデザインで高めることができれば、100円のものが1000円にも1万円にもなり得ます。デザイナーは『デザインの力が理解されない』と嘆く前に、社会の変化に敏感になり、足りないピースを補う提案をどんどん仕掛けていくことが重要だと思います」(宇田氏)
最後に鷲田氏が「変化への対応は、経営の重要な役割です。そして、デザインの活用は、組織の変化への対応能力を高めるのではないか、という仮説を私は持っています。デザインには、目の前のものをうまく組み合わせて、より良い答えを作り出していく力があります。技術とは別の角度から経営を支える要素として、これからますます重要になってくると考えています」 と述べ、議論を締めくくった。