ワーキングママの帰宅を待って
夕方から夜にかけての取材会

 EV(または、超小型モビリティ)活用方法の伏兵が登場した――。

 2013年2月18日(月)、埼玉県さいたま市・JR北浦和駅。午後7時を過ぎると改札口は、俗称「埼玉都民」の帰宅ラッシュだ。東京駅から京浜東北線で約40分という立地は、この周辺を近年、“サラリーマン&ワーキングウーマン”のベッドタウンとして発展させてきた。

 同駅西口ロータリーから斜め右手、クルマ1台がやっと通れるほどの幅の商店街“ふれあい通り”を抜けて約5分。正面にイオン北浦和店が見える。

イオン北浦和店4階屋上駐車場。出入り口近くの3台分に普通充電器付きのEV専用スペース。駐車場全体の管理はイオンからパーク24に委託されている Photo by Kenji Momota

 1階食品売り場を抜け、エレベーターで4階へ。扉を開け、屋上駐車場に出ると、すぐ手前の三台分に、普通充電器を備えたEV専用スペース。そこに、華やかなブルーメタリックボディに大きくEVロゴをあしらったホンダ「フィットEV」の姿があった。

 3台のフィットEVはここで、車両の貸与先である、30歳代ワーキングママ3人の帰りを待っていた。彼女たちは地元さいたま市内在住で、同市内の保育園に子どもを預けて都内へ通勤している。 

 当日はさいたま市の「官民連携によるEV生活向上実証事業」の報道陣向け取材会が開催されたのだ。これは、同市が内閣府から認定された、地域活性化総合特区「次世代自動車・スマートエネルギー特区」に連動する動きのひとつ。筆者はそう思って、ママさんたちを待っていた。

 2013年2月4日付け、当該実証事業に関する同市の記者発表資料では、イオン、パーク24、NTT東日本、ホンダが参画する全体構造図がイラスト化されている。

 そうした事前情報下では、正直なところ、筆者の心持ちとしては「まあ、よくありがちなもの」というレベルだった。

 なぜなら、対象がEVということもあり、「EV、充電インフラ、カーシェアリング」といったキーワードでは、過去に取材したなかでは経済産業省のEV・PHVタウン構想下での松沢成文・前県知事時代の神奈川県のケースなどの全国各地事例と、今回のケースとの差別化が思いつかなかったからだ。