③相続争いの泥沼化を防ぐ方法

 さて、ここでまた、疑問を持たれた方がいるでしょう。「最終的に調停となり、裁判所が指名した不動産鑑定士が見積もりを行うのなら、兄弟がそれぞれ不動産鑑定士に依頼する前に、初めから調停を行ったほうが早いのでは?」と。

 まさにその通りです。そのため私は、相談に訪れた方には、「最初から調停にするか、あるいは、兄弟共同でひとりの不動産鑑定士を選び、中立的な立場で鑑定してもらうよう依頼するかのどちらかがいいでしょうね」とアドバイスしています。

 兄弟双方が別の不動産鑑定士に依頼をすると、単純にそれだけのコストがお互いにかかることになります。しかも算出された評価額がバラバラになり、結局家庭裁判所で調停を行うことが目に見えているわけです。その間、兄弟の仲もさらに険悪になってしまうことでしょう。

 兄弟共同でひとりの不動産鑑定士を選び、中立的な鑑定をお願いできるのならばそれがベストでしょうが、すでに兄弟の関係がこじれそうならば、いっそ、初めから裁判所を頼るのも一つの手でしょう。

 ただ、調停は裁判官が一方的に判決を言い渡すわけではなく、あくまで、相続人同士の話し合いに家庭裁判所の調停委員が間に入り、落としどころを探っていく手続になります。あくまで話し合いの場ですので、譲り合いの気持ちが必要になるのです。

 もし落としどころが決まっているなら、調停にも頼らずに、お互いの歩み寄りで解決するのが最もいい方法といえます。

(本原稿は橘慶太著『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』から一部抜粋・追加加筆したものです)