質問1「年を重ねてわかった」ことはありますか?

 人は年を重ねるたびに、経験からさまざまなことを学び、生涯をかけて成長していきます。映画『ナイロビの蜂』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したレイチェル・ワイズは、「年を重ねることで、より賢く経験豊かになれば、物事が容易になる。自分自身にも自信が持てるはず」と言ったようにです。

 10年前の自分と比べれば、今の自分には、当時はなかった知恵や気づき、自信もついていることに気づくでしょう。

 わたし自身は今40代後半となり、人生の正午を迎えています。

「人生の正午」とは、スイスの深層心理学者であるカール・グスタフ・ユングが、人生を1日の太陽の動きになぞらえた考え方で、人生の前半と後半の境となる時期のことを言います。年齢で言えば、40歳から50歳くらいが正午にあたるとされています。

 太陽が東から昇り、正午を迎え、西の空に移動して日没を迎えるなか、正午を境に大きな変化があります。

 それは、午前に日があたっていたところに影が移り、影だったところに、日があたっていくのです。ギラギラした日の光が、徐々に日没にかけて優しい光となっていきます。

 ユングは、「人生の正午」をポジティブに迎え入れることの大切さを説いています。人生も正午を境に、日のあたる場所、影となる場所が移動していくように、興味や関心、考え方や価値観に変化が生まれ、生き方自体も変わっていきます。

 そう考えれば、年を重ねることは決して老いていくことだけを意味するのではなくなります。それまで影になっていた部分に新たな光があたり、浮かび上がってくること。それが年を重ねることでもあります。

 人間関係でも年を重ねて成熟していくと、あらためて家族や友人の存在のありがたみに感謝できるようになり、そこに幸せを感じるようになります。

 年を重ねることで、若いころにはわからなかった他人の人間味にも気づけます。他人の人間味に目を向けると、自分に足りないものに気づけたり、新たな交流関係も広がったりしていくことでしょう。

 わたしの場合、人生の正午を迎えたころから、残りの人生をだれかのために役立てることに深い意義を感じるようになりました。

 実際、人はほかの人の役に立てば立つほど、幸福度が高まるものであるとされています。

 ポジティブ心理学の創始者であるセリグマン博士も、「学習性無力感とうつ病の関係性」といった心理学でのネガティブな領域の研究からスタートし、ポジティブな領域へと挑戦していく過程で「ほかの人を助けること」に抗うつ効果があることに気づいたと述べています。

 セリグマン博士は、自分自身が幸せになることを考えるよりも、自分がほかの人に何ができるかを考えることのほうが、その人を幸せにする。そのためには自分自身を知り、大切な人のことを知り、その人のために何ができるかを考えながら行動することで、「PERMA」の感情も高まるとも言っています。

「幸せ」を感じるときの感情や状態を、セリグマン博士は次の5つの要素として頭文字をとったもの
・Positive Emotions・Pleasant Emotions(ポジティブ感情・心地よい感情)
・Engagement・Flow(エンゲージメント・フロー)
・Relationships・Positive Supporting(良好な人間関係(性))
・Meaning & Purpose(意味・意義と目的)
・Achievement・Accomplishment For its own sake(達成感)

 自分のためと、だれかのためは、対になるものではありません。だれかに何かを与えるほど、自らも豊かになっていきます。自らが満たされ、豊かになるほどに、心の中にあるコップの水があふれ出し、さらにほかの人にもやさしくなれるようになるのです。

 自分が何をしたかも大切ですが、だれかのために何ができるかを考え行動に移すなかに幸せを見いだせることも、年を重ねていくほど染み入る幸せの深さと言えるのではないでしょうか。

質問2
ほかの人が目に入らないくらい
達成感でいっぱいになったことはありますか?

 これまでの人生を振り返ってみて、おそらく自分だけしか知らないであろう「よくやった!」と達成感を覚えるのは、どのようなときですか?