Photo by Mieko Arai
三井住友銀行(SMBC)のスコアリング融資、「ビジネスセレクトローン(BSL)」が再び脚光を浴びている。新規需要が増え始め、昨年末ごろから、これまで減少する一方だった残高に反転の兆しが出てきているのだ。
銀行関係者の間では、「そもそも、まだ新規需要を取り込むほど積極的にやってたの?」と驚きの声が上がる。それもそのはずだ。銀行界には、スコアリング融資に苦い経験がある。
スコアリング融資とは、融資の可否判断や設定金利を、決算書などのさまざまな数値を基に機械的にスピーディにはじき出す中小企業向け無担保融資のことだ。営業効率を上げる革新的なモデルともてはやされ、2000年代半ばにはメガバンクがこぞって活用した。
ところが、行員が企業の経営状態を把握しない「まるで通販」(地方銀行関係者)のような機械任せの審査が行われるなど、不良債権が想定以上に増加。スコアリング融資から撤退する銀行が相次いだ。
それでも、SMBCでは地道にBSLを続行。行員による取引状況などの確認強化はもちろん、数値化が難しい「定性的リスクを織り込むなど、モデルの高度化を進めており、貸し倒れが抑制されてきている」(SMBC)と胸を張る。収益面でも、「リスクに応じた採算性が改善している」(同)と、まずまずだ。
しかし、そんなSMBCの表情が冴えない。この3月に、中小企業の資金繰りを助ける中小企業金融円滑化法が終了することで、BSLの需要増が予想されるからだ。
一見、それはうれしい状況のように思える。だが実際には、有象無象まで駆け込んできて不良債権が膨らむ恐れが否めない。加えて、「今は中小企業の融資を銀行が断ると金融庁に通報が行き、円滑化法終了で倒産が増えないようにと焦る金融庁からすぐにお叱りの電話がくる」(複数の銀行関係者)のも悩みの種だ。
中小企業をめぐる融資に悩みは尽きない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)